フィル・スペンサーがKinda Funny Gamesの『Kinda Funny Xcast Ep. 137』に出演し、その発言が海外で話題になっています。
家庭用ゲーム機戦争の終わりを感じさせる
私たちは、ソニーを出し抜こうとか、任天堂を出し抜こうというビジネスをしているわけではない。
私たちにとって、素晴らしい解決策や勝利はありません。
Phil Spencer: “We’re not in the business of out-consoling Sony or out-consoling Nintendo” | GamesIndustry.biz
家庭用ゲーム機のシェア争いに関しては、もうXboxが勝つのは現実的に難しい事を認めているような発言であり、海外の反応でも家庭用ゲーム機戦争(Concole Wars)の終わりを感じているユーザーがチラホラいます。
Console Wars | Twitter
私も2023年第1四半期(1~3月)の結果を見て、雌雄を決したように感じました。
【Circana】【Gfk】【ファミ通】PS5が独走態勢に入った2023年第1四半期(1~3月) | PSVR2非公式ブログ
フィル・スペンサーは「ソニーを出し抜こうとか、任天堂を出し抜こうというビジネスをしているわけではない」と言っており、これ自体は以前にも同様の発言をしていました。
とは言え「最初から勝負する気はなかったから」というわけではありません。Xbox Series X|S発売前はWinning planがあると明言して勝つ意欲を見せていました。
私たちにはプランがあり、そのプランについて非常に強固に感じています。私たちには計画があり、その計画には確固たる自信があります。私たちには勝てるプランがあると信じていますし、実行に移さなければなりません。
Xbox Series X vs. PS5: Phil Spencer Feels ‘Really Good’ About Power and Price | IGN
さらに2020年6月のPlayStationのデジタルイベントを視聴した後、
正直なところ、彼らのショーを見た後は気分が良かったです。我々が構築してきたハードウェアの優位性は、ゲームやフレームレートなどの話をしているうちに明らかになると思います。
(中略)
これから発表されるゲームとその見せ方、ハードウェアの優位性を考えると、私たちとても良いポジションにいると思います。
Phil Spencer Discusses Xbox Series X, First-Party Lineup, xCloud, Competition, & His Reaction to the PS5’s Reveal
クラウドやサブスクではなく、ハードウェアとゲームに自信を見せていました。
このフィル・スペンサーの「気分が良かった(良くなった)」は、当時それなりに話題になった発言でした。
今にして思えば的外れであり、最新の『STAR WARS ジェダイ:サバイバー』も買収したベセスダの『Ghostwire: Tokyo』(Tango Gameworks)もPS5がパフォーマンスで上回っています。フィル・スペンサーの気分が悪くなっているのは想像に難しくありません。
フィル・スペンサーがSIEや任天堂とは別方向を目指し、クラウドゲーミング、サブスクらに力を入れるのは良いと思います。クラウドゲーミングとサブスクは家庭用ゲーム機に限りませんので、家庭用ゲーム機でのシェア争いに負けても終わりではありません。
でもPS5とXbox Series X|Sの発売前は、SIEの力を入れた発表を見て「気分が良かった」と言うのは、馬鹿にしたような発言ともとれますし、自信満々にWinning planがあると語っていた事もあり、家庭用ゲーム機でのシェア争いに勝つ自信は見せていましたから、今の結果は望んでいたものではなかったでしょう。
Xbox Series X|SのWinning planは失敗しているように見えますが、SIEとは違うフィル・スペンサーのやり方は面白いと思います。継続すれば次世代はどうなるかわかりません。
私もPSVR2において、Meta Quest 2とPICO 4のやり方を追いかけるのは反対でしたしね。違うものを目指した方が面白いです。
家庭用ゲーム機戦争は終わらない
ちなみに「家庭用ゲーム機戦争の終わりを感じさせる」と書いたのは現世代のシェア争いがほぼ決まったんじゃないだろうか、という話なだけです。ユーザーによる家庭用ゲーム機戦争はそんな事じゃ終わりません。
よく言われるゲーム業界における「くだらない事」として家庭用ゲーム機戦争(Concole Wars)があります。でもTwitterを見ていると家庭用ゲーム機戦争(Concole Wars)を声高に否定する人は、大体ずっぷり浸かってる兵隊みたいな印象です。否定した口で自分がひいきにしていないプラットフォームを叩くか、ひいきのプラットフォームを持ち上げるか、そういう行動が目につきます。
コンソールウォー | Twitter
こうなので終わりません。政治に宗教にスポーツにビデオゲーム、熱心なファンがいるところはこうなって普通なんじゃないでしょうか。
Winning planが失敗した理由は?
ゲームソフトの力ではない?
素晴らしいゲームを作りさえすれば、すべてが好転するという解説を外で見かけます。私たちが素晴らしいゲームを作れば、突然、コンソールのシェアが何か劇的な形で変化する、というのは事実ではありません。
コンソールで素晴らしいゲームにもっと集中すれば、どうにかコンソール競争に勝てるというこの考えは、ほとんどの人の現実と関係ないと思います。
これはXbox Game Studiosのゲームソフト面での失敗を「素晴らしいゲームを作りさえすれば、すべてが好転する」「突然、コンソールのシェアが何か劇的な形で変化する」などと極論化して誤魔化しているように感じられました。
『Halo』や『GEARS』シリーズを順調に育てられず、Xbox Series X|S発売前に発表していた『Fable』『Senuas Saga:Hellblade II』『Forza Motorsport』『Everwild』『Avowed』らを未だにリリースできておらず、買収で得た『Redfall』は酷い評価を受ける状態でリリースされました。
ゲームソフト面でやれるだけやって売れなかったのなら問題は別のところにありますが、ここまでの結果は十分だったと言えません。
これはPSVR2の現状にも言えます。ローンチ時期が明けた後、ソフト不足を感じています。「素晴らしいゲームを作りさえすれば、すべてが好転する」と極端な事は言いませんが、注目されるゲームを定期的にリリースする必要があります。
下記の「スターフィールドが10点満点中11点で、人々がPS5を手放すような世界はない。そんなことはありえません。」は同意です。1本のゲームだけで劇的に変わる事はありません。『バイオハザード RE:4』が良くても、その後が続かなければハード牽引効果は弱いです。
アカウント縛りがキツい
誰もがゲームのデジタルライブラリを構築したXbox One世代で、最悪の世代を失ってしまった。
毎年コンソールを購入する人の約90%は、すでに3つの主要なコンソールのエコシステムのいずれかに入っており、人々が前世代から持ち越せるデジタルライブラリを確立している今、切り替えコストはより高くなっていると述べています。
スターフィールドが10点満点中11点で、人々がPS5を手放すような世界はない。そんなことはありえません。
これは完全に同意します。現代のゲームプラットフォームはアカウントの縛りがキツすぎてプラットフォームの乗り換えは簡単ではありません。
PS3世代→PS4世代のアカウント縛りは弱かったです。後方互換がなく、パッケージ版が主流であり、おまけにPS Plusもマイナーな存在でした。
PS4世代→PS5世代は比較にならないほどアカウント縛りがキツくなりました。後方互換があり、デジタル版が主流になりつつあり、オンライン有料化のおかげでPS Plus会員が爆増してフリープレイの注目度も爆増しました。
購入したゲーム、ライブラリに入れたフリープレイゲーム、フレンド、トロフィー…これら全てを捨ててプラットフォームの乗り換えはしにくいです。
日本だとコミュニティの差も大きすぎます。PS5が出荷できなかった時期に「Steam(PC)に乗り換えるぞー」という声も聞かれましたが、簡単ではありません。
私も拗ねてPC Gama Passに3年間加入して頑張ってPCゲームに慣れようとしましたが難しいです。だから自称PCゲーマーがプレイステーションコミュニティに絡む理由も実感としてわかります。
フィル・スペンサーがXbox One世代で負けたのが痛いと語っているのは事実だと思います。ゲームとアカウントがガチガチに縛られる本当に重要な世代でした。PSはアカウント縛りがキツくなるPS4世代で勝ったのが有利すぎました。
プラットフォーム&アカウントへの依存は思った以上に強かったと感じています。もちろん絶対に乗り換えられないわけではないですが、かなり強い縛りになっているんじゃないでしょうか。
「乗り換える必要なんてなく、ゲームハードを全部買えばいい」というのは個人における解決策ではありますが、それはかなりマニアックな発想であり、ゲームハードを全部購入し、3つも4つもアカウントとコミュニティを管理するゲームライフは一般的とは言えませんから、ゲームプラットフォームのシェア争いを語るうえでの解決策ではありません。大半の人はPS5を1台買うのも気軽にできる行動ではありません。
PSVR2はアカウントを追加する必要がなくPS5ユーザーに売り込めるのが強みです。でもPS5ユーザーはMeta Quest内で人気のゲームでは釣りにくく、『グランツーリスモ』『バイオハザード』のようなPSユーザー受けするゲームが重要です。今のソフトスケジュールはPSアカウントの強みを活かせられないようにも感じます。
賛否両論ながら面白い
Youtubeのコメント欄は当然ながら賛否両論ですが、好意的な声は多いです。こういう場でトップが語ってくれる透明性が高く評価されています。
フィル・スペンサーの発言内容がネガティブに感じられるのは、アクティビジョン・ブリザードの買収問題が継続中ですので、弱い立場をアピールしていると見ている人もいます。素直で謙虚だと評価する声もあれば、本心かどうかわからないと疑う声もあります。
6月で辞任する覚悟での発言だったなら寂しいですが。
個人的には好印象です。当時のPS4ユーザーとしてSIEの発表の後の「気分が良かった(良くなった)」発言は気分が悪かったので今こそ蒸し返さずにはいられませんが、この状況でKinda Funny Gamesに出演したフィル・スペンサーは面白い人だと思います。
6月11日にはXbox Games Showcase & Starfield Directが予定されており、どんなものが出てくるか楽しみです。VRゲームばかりやっているとはいえ、2025年8月までPC Game Passを契約していますからね。
「戦争」と言うと大袈裟ですが、それぞれファンの熱が高まるようなプラットフォーム同士の競争は必要です。
Mark your calendar for June 11: The Xbox Games Showcase and Starfield Direct Double Feature kicks off at 10:00 am PT. See what’s coming to Xbox, PC and Cloud Gaming! https://t.co/mkVMhNGG46
— Phil Spencer (@XboxP3) May 3, 2023
フィル・スペンサーの告知ツイートに隙間があり、もしかしたらPlayStationと関わるビジネスがあるのかもしれません。「私たちにとって、素晴らしい解決策や勝利はありません。」「スターフィールドが10点満点中11点で、人々がPS5を手放すような世界はない。そんなことはありえません。」ここまで言ってるとなると、他のプラットフォームを利用する方法があるように思えなくもないです。まだアクティビジョン・ブリザードの買収を諦めていないとしたら、オープンな姿勢をアピールするメリットもあるでしょう。
ぼぼPSVR2に関係ない話でしたが、フィル・スペンサーがこういう話をするのは意外だと感じて気になりました。Game*Sparkの記事でも「いつになく弱気にも見えた」と書かれていました。私はガチガチのPS派ですけど、Xboxのボスが弱気に見えると寂しいところはあります。
PSVR2に関しては『Cities: VR – Enhanced Edition』にハマりっぱなしで新鮮なネタがないです。
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