センターピンを倒してストライクだった『ファイナルファンタジー16』

レビュー・感想

『ファイナルファンタジー16』をクリアしました。

まずは高評価おめでとうございます。
メタスコア88点(108件)という高評価を得ており、Twitterの反応も好評が多数で喜ばしいです。ユーザースコアの0点爆撃が虚しくなるほどであります。

ファイナルファンタジーのナンバリング新作を作るという重圧は計り知れません。おそらく100億円を超える規模のプロジェクトでしょうし、スクウェア・エニックスの最大の看板でありますから、このゲーム評価は今後のスクウェア・エニックスにとっても重要です。
プロデューサーの吉田直樹氏、ディレクターの高井浩氏、クリエイティブディレクター&メインシナリオの前廣和豊氏を中心した開発チームは見事にやり遂げたと言えるでしょう。

ファイナルファンタジーのナンバリング新作は「個人的には面白かったけど世間的には75点」ではダメでしょうから、今回のこの結果は素晴らしいです。

良かったところ

このゲームは「ストーリードリブン」が成功の要因だと思います。
「ストーリードリブン」とはFF13のコンセプトです。

何度も「ストーリードリブン」という言葉が登場した。これはシナリオを基にしながら、すべての計画を作っていくという手法で、「FF XIII」開発の根底をなす思想だ。
Game Developers Conference(GDC) 2010現地レポート スクエニ、ディレクター鳥山氏が語る「FF XIII」の開発秘話 「FF XIII」の様々な「何故?」に答える貴重なセッション、未来の「FF」はどうなる? | GAME Watch

発売前に吉田直樹氏が「ストーリーに力を入れた」と言っていたようですが、まさにその通り。ストーリーが主軸であり、そこに上質な戦闘と演出とグラフィックと音楽を加えて仕上げており、極上のメインストーリー体験となっていました。これがFF16の面白さです。

私はサブクエストとリスキーモブを全部やってからクリアして1周約40時間でした。この約40時間、先の展開が気になり、ずっと熱中できました。
トロフィーはプラチナ以外が残り3つ。

贅沢な一本道

サブ要素もやったとは言え、寄り道は少ないですし、ほぼ一本道な印象です。そしてムービーが多くて長い。悪く言えば「一本道のムービーゲー」でしょうか。10年前であれば私も否定的だったかもしれません。それこそFF13の時はやや否定的でした。

しかし今は、大作は似たようなフォーマットのオープンワールドゲームが多く、同じような作業を繰り返すばかりで食傷気味でした。
AAA級のメインストーリー重視のゲームが希少すぎる存在であり、唯一無二に近いです。FF16は力の入ったメインストーリーが楽しめる事が贅沢に感じられるほど最高でした。今これを食べたいという最高のタイミング。

壮大なファイナルファンタジーのストーリー

少年期、青年期、壮年期、クライヴの人生を追体験するような壮大なストーリーですから沁みました。自分の人生のように心に残るゲームとなりました。

そして剣と魔法とクリスタル、これぞファイナルファンタジーという感じです。奇を衒う事もなく、伝説の勇者が仲間と力を合わせて魔王を倒すような王道的ストーリーでもあります。
でもFFにしてはグロさとエロさがあり、奴隷のようなベアラーの存在の重さもあってダークです。
かと言って大人向けとは言えず、少年漫画のような青臭さはあります。どこか懐かしさを感じながら、それを楽しめる余裕もあり、熱くなれました。

ストーリーの肉付けとなる演出もカッコ良かったです。日本の漫画・アニメ・ゲームの影響を節々に感じ、過去のFFをプレイしているとニヤッとしちゃうような場面もありました。

行く先々の世界の美しさも素晴らしい。ファンタジー世界の旅を心から楽しめる。これがVRなら最高なんですけどね。
スクショが止まらないゲームです。

戦闘

ストーリーを進めるにあたって重要なのが戦闘。3種の召喚獣を切り替えながら戦うバトルはFF16の最高の部分の1つです。

各召喚獣には固有のフィート(ボタンアクション)があり、各2種のアビリティをセットできます。ですから3種の召喚獣、3種のフィート、6種のアビリティを駆使して戦います。それに加え長押し攻撃、魔法バースト、×+のアクションなどもあります。
自分で考えてやれる事が多く、試行錯誤するのも楽しいです。

歯ごたえのある難易度も戦闘の緊張感と爽快感を生んでいます。ちょっと油断すると一気にHPを削られます。でも回復は方向キーで瞬時ですからストレスを感じにくい。
アクションゲームとして★3.5くらいの難易度でバランスが良いと思いました。強敵を倒した時の達成感があります。

敵のモーションがわかりやすくて回避が決めやすいのも気持ち良いです。
エフェクトが派手すぎる時の見にくさは難点ですけどね。

サポートアクセサリ無しだと難易度は高めですが、サポートアクセサリありだとチート級に簡単になります。特にオートドッジはバランスブレイカーでしょう。敵の攻撃を自動で避けるとなると、わざと死ぬのも難しいんじゃないでしょうか。ちょっとやりすぎな感じもしますが、個人的には使いませんから何とも言えないです。

ポリコレ的減点

Eurogamerら4メディアが60点という低評価であり、うち3メディアがアフリカンがいない事に触れています。70点と評価したメディアも含めてポリコレ的減点が感じられました。

減点されるような背景もあってか、最近の北米・西欧の大作ゲームはポリコレ欲張りセットが多いです。人種のパズルを埋めるようにいろんな人種をバランス良く揃え、それでいて黒人にタラコ唇はダメ、ガリ勉タイプのアジア人もダメ、守られる女性はダメ、外道な役は白人担当、様々な性的嗜好を見せること、美男美女は好ましくないなど、細かな縛りも感じられます。
いろんな縛りの結果、個性が弱いモブキャラのようになり、「人間を描く」という部分の刺激が弱く、キャラクターとストーリーに魅力を感じないゲームが増えていました。

FF16はキャラクターがカッコいいです、美人です、モブキャラですら。
日本は映画より漫画文化が強い印象であり、漫画においてはキャラクター>ストーリーという意識があり、荒木飛呂彦先生も漫画の4大要素の中でキャラクター>ストーリーと書いていました。見た目のカッコ良さや個性は重要です。キャラクターを好きになり、ストーリーにものめり込めます。

性的嗜好に関してFF16では少しだけ同性愛を描いています。
ポリコレパズルのピースを埋めるだけのゲームは「同性愛という設定にしてキスをさせる」だけに感じます。FF16の同性愛の描き方は、ポリコレパズルのピースではない確かな愛情・感情が伝わり、泣けました。ちゃんと人が描けていました。

まぁFF16は良かったですけど、今後の大作ゲームはポリコレ汚染によって引き続きキャラクターとストーリーは期待しにくいと思います。
FF16内で描かれている黒の汚染はポリコレ汚染のように感じました。アジア・東欧はまだ汚染が少ない印象ですから、頑張ってほしいところではあります。

高速ロード

PS5なので高速ロードで快適です。
ワールドマップからのエリア移動に5秒近くの暗転はありますが、「Now Loading」や「Tips」を表示しないのが最高です。これをやるとせっかく高速ロードなのにロード待ち感が出てしまいますからね。

長文がない

最近は長文の文書やNPCの長い会話を含むゲームが多いです。昔であれば文字の多さに驚けましたが、今はダルい要素になりかけています。そこら中に落ちている長文の文書を全部読まないですし、中身の薄いNPCの長い会話もうんざりする要素です。
FF16は無駄な長文がほとんどなくて、快適にプレイできました。
長い説明は特定のNPCがわかりやすくまとめてくれるシステムもナイスです。

バグ・不具合がまったくなかった

40時間超のプレイの中でバグや不具合がまったくありませんでした。
最近の大作ゲームはローンチではバグや不具合があって当たり前みたいな感じですから、それがまったくなかったのは素晴らしいです。

細かな仕様

敵のドロップアイテムを吸い込んで獲得できるのは有難いです。

死亡時にポーションが補充されるのも有難いです。

仲間が死なないのは有難いです。仲間がすぐ死ぬゲームは面倒です。

クエストの発生と場所がわかりやすくて便利です。便利すぎて探す楽しみはないですが。

アビリティポイントのリセットが簡単にできますから、いろんなアビリティを迷わずいろいろ試せます。

細かな配慮があり、意識する事もなく魚の小骨を取ってくれているような印象すらあります。

気になったところ

おつかいのサブクエスト

多くの人が指摘するであろう、単調なおつかい感のあるサブクエスト。メインクエストが面白いだけに、このサブクエストの仕様はガッカリするところです。

ベアラーがどういう扱いを受けているのかだったり、住民がどういう生活を送っているのかを伝える役目は果たしています。

ゲーム中盤までは、サブクエストがかなり大きめの不満でした。でも終盤のサブクエストは各キャラクターを掘り下げたものが多く、4つほど泣けるものもありました。単調なおつかいでもストーリーが面白ければ満足でき、終盤のサブクエストはプレイするのが楽しかったです。

初回クリアまでにサブクエストは全クリアするのをオススメします。それぞれのキャラクターを深く知った方が、最終決戦とエンディングの味わいが増す。

召喚獣バトル

召喚獣バトルはゲームとしてズレているように感じました。

ゲーム内映像として見れば、カッコ良さとド迫力でゲーム史上最高レベルです。前述した「日本の漫画・アニメ・ゲームの影響」が色濃く、懐かしさとか嬉しさも感じました。
召喚獣バトルは全てがラスボス戦のような力の入った作りであり、作り手の熱量を感じます。

ただ、ゲームとしてはつまらなかったです。

まずアクションパートはミニゲームレベルです。召喚獣バトルでのアクションパートは通常バトルとは違う固有のものです。自分でセットした装備やアビリティは意味がありません。ミニゲームレベルのものであり、やれる事の幅も狭く、単調な削り作業に感じました。映像的な迫力は凄いですが、プレイ自体はあまり楽しくはありません。

アクションパート中にムービーが挿入されるのも萎えます。戦闘以外のストーリームービーは長くても良いのですが、戦闘中のムービーは邪魔されて萎える感があって良くないです。

ムービーからのQTEは、ゲームではなく映像を作りたい人が安易に採用したQTEバトルとしか感じませんでした。『アスラズ ラース』っぽさがありますが、それは面白くなりにくいです。

そして長すぎるのも問題に感じます。長ければいいってわけじゃありません。映像作品としてはカッコ良くて迫力満点でテンションが上がるところはありますが、長すぎて、上がったテンションが落ちた頃に決着がつくパターンになってしまいました。

ゲームというよりコントローラーを奪われて客観的に配信を見ている気分になり、没入感がありませんでした。2周目をプレイしていても、カットできない召喚獣バトルは気が滅入ります。

ゲームとしては好みではないものですが、映像としては好きです。このカッコ良さとド迫力で『アドベントチルドレン』のような映像作品を作ってほしい。

育成

RPGにおいて、装備品、スキル(アビリティ)などの入手や強化は面白い要素になりやすいですが、FF16はこの部分が弱かった印象です。素材集めと鍛冶屋はあるものの、あまりハマっていません。

細かな仕様

まずダッシュの仕様は不満です。スティックを倒してから一定時間後にダッシュします。あちこちおつかいさせるくせに酷い仕様だと思いました。
さらに言うとチョコボも微妙に使いにくいです。R3長押し→呼ぶ演出→チョコボに近づいて×で乗る→R3長押し→降りる演出。快適に移動したいから乗り物を使うのに、乗り降りに微妙な待ち時間が多い。走りながら止まらず乗ってほしい。
ダッシュとチョコボの使いにくさが、おつかいの面倒くささを悪化させています。

ミニマップがないのも不満です。ミニマップばかり見てほしくない意図はわかります。でもこのゲームは一定範囲内を捜索させるクエストが多いのに、ミニマップがないから範囲がわからず、結局はマップを開きます。マップ画面の切り替えが多くなり、不便さを感じました。ミニマップなしで見る世界の良さよりも、不便さの方が問題です。
ミニマップのON/OFFでOFFがデフォルトくらいの推し方なら良いですが、OFF強制は良くないと思いました。

ブラーをOFFにできないのも不満です。FF16に限らず全てのゲームでブラーが嫌いです。

センターピンを倒してストライク

ポリコレ汚染等で白けてきてしまっていて非VRゲームに冷めていた中、約40時間ずっと熱中して楽しめた『ファイナルファンタジー16』。大声で言える不満点もあるのに何故こんなにも楽しかったのかと言えば、センターピン理論でストライクだったからだと思います。センターピン理論とは「影響力の大きいものに狙いを定めて効率よく成果をだす」という理論です。ボウリングのセンターピンを見事に倒すという事。

このゲームにおけるセンターピンとはストーリー&キャラクターであり、それを戦闘と演出とグラフィックと音楽で極上に仕上げています。私は見事にハマった。
思えばFF15はストーリーと未完成さが批判されたポイントでした。FF16は一番大事な部分があり、DLCの予定もなく、しっかり完結しています。

逆に言うと、自由度や育成・強化を求める人には合いにくいでしょう。

PSVR2

PSVR2と4K144fpsモニターの両方でプレイしました。
ムービーに力が入っていますから、PSVR2で映画館っぽさを最も味わえるゲームだと思いました。映像のサイズ感がリアルに近いですから音のサイズ感もリアルに近いです。
小さい文字がちょっとブレるのは解像度の問題を感じ、大きすぎる画面だと激しいアクションでの見にくさは感じやすいです。

6年7ヶ月ぶりの『ファイナルファンタジー』新作、最高に楽しめました。楽しめましたが、こういうゲームは今後は出てこないような気もして寂しさも感じます。

コメント

  1. 匿名 より:

    感想おおむね同感です、自分がなんとなく感じていた事が整理されていて腑に落ちました
    一点だけ、サポートアクセサリはオートドッジの場合回避できる時のみ自動回避なので、エフェクトが激しい場面以外は手動と体感大差ないです、オートポーション等も同様。
    個人的にゲームを変えてると思ったのがオートアタック、勝手に裏でチャージしてくれる、適切にブロックや回避攻撃を発動してくれる、ロックオンスキルが完全オートロックに、他距離に合わせて攻撃を変えてくれたり、明らかに手動より有利な挙動になってますね

  2. 岸田文雄 より:

    フレームレートの安定について言及していないのは意外でした
    VRRの恩恵があるのかな?

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