マイクロソフトの決算発表に絡んだ情報でGame Passの伸び悩みが報告されています。
伸び悩むGame Pass
> 新しい財務報告書によると、Game Passの加入者数の伸びは、
> CEOのSatya Nadella氏の報酬に連動する会社の年間目標をはるかに下回っています。
> 2022年6月30日に終了する会計年度で、Game Passは成長率73%を目標にしていました。
> これはナデラ氏やその他の経営幹部に対する業績インセンティブの一環です。
> しかし、同サービスは28%の成長しか達成できませんでした。
Microsoft misses Xbox Game Pass subscriber target for second year | AXIOS
- 2020年 目標71% → 結果86%
- 2021年 目標48% → 結果37%
- 2022年 目標73% → 結果28%
2年連続での目標未達成。しかも2022年は73%を目標にしていながら結果は28%という理想と現実の差が痛々しい。
86%→37%→28%という急ブレーキのかかったような落ち方も未来を感じないし、方針の見直しが必要なほどかなり酷い結果に見える。
サブスクは低価格で膨大な数のコンテンツを楽しめますが、そのためには膨大な会員数が必要です。
ネットフリックスは先行投資の期間で急成長期でもあった2015年から2019年の5年間で莫大な赤字を出しています。2019年には約3,200億円の赤字。
莫大な赤字を出しながら会員数は7,084万人→1億6,709万人へと増やしていました。
2020年に黒字化し、会員数は2億366万人となっています。数年間はジャブジャブ先行投資して莫大な赤字を出しても、後で回収できれば良い。
Game Passも先行投資の期間で急成長期であるはずだったかと思いますが、この伸び悩みでは厳しい。
フィル・スペンサーは「主に、ある時点で、コンソール上で加入を希望する全員に到達したため」とコメントしていますが、ハード発売から2年目や3年目はグイグイ伸びる時期のはずですから、苦しさを感じる発言。
> PC Game Passの契約数が前年比159%増加したことなどを明らかにした。
ともありますが、PCはSteam一強ですから、PC Game Passは加入者数を発表できない程度の数字でしかないでしょう。そもそも2022年は目標73%に対して結果が28%と出ちゃっているので、PC Game Passの増加はあまり影響がないやつじゃんとわかってしまう。
もしPCでの会員数が多かったとしたら、家庭用ゲーム機側の会員数は減少していることにもなる。
しかも初月100円を続けていますので、100円で加入者が伸び悩むのはかなり厳しい。
継続しない人が多いのかと思う。
『Starfield』『Redfall』がリリースされる月は一時的に伸びると思うけど、1つのコンテンツが短時間で消化できる映画や音楽は他のコンテンツを試しやすいからサブスクを継続されても、ゲームの場合はやりたいゲームを終えたら退会する人が多いのは想像できる。結局、ゲームのサブスクは難しいというオチしかない。
「黒字だ!」と言ったところでソフトの開発費を差し引きしない計算でしょうし、そりゃそこだけ見れば黒字にできて当たり前でもある。PS Plusのゲームカタログも余裕で黒字でしょう。本来想定していた会員数より大幅に少ない結果の中、今後、大金を投じた大作をデイワンで100円や850円でプレイされると開発費を賄うのが大変だ。
やはりこうなってしまったね
2年連続での目標未達成となってXbox Game Passはつまずいている状態。
驚きはまったくなく、「やはりこうなってしまったね」という結果。
過去記事に書いたように、ゲームのサブスクは難しいと思う。
ゲームマニアにはわからないサブスクの魅力のなさ | PS5非公式サイト
PC Game PassとPS Plus プレミアムに加入していますが、最近はどっちもあまり利用していません。
1ヶ月の中で、本気でがっつりプレイできるゲームは1~3本くらい。で、その本気で遊びたいゲームがたまたまPC Game PassとPS Plus プレミアムで提供されている確率は低い。やっぱり注目の新作をプレイするのが、一番濃くて楽しいゲームの時間になる。「加入しちゃってるからPC Game PassかPS Plus プレミアムの中から選ぼう」となってしまうと、ゲームライフがつまらなくなる。
結局のところ「ラインナップが微妙」なのが致命的。ネットフリックスみたいなサブスク専門で全タイトルサブスクって感じじゃないとラインナップの微妙感は拭えないと思う。本当にやりたいゲームがサブスク外で単品販売されているのを横目に見ながらサブスク加入は気持ち良くない。
過去記事で書いてない点としては、サブスクのゲームはプレイが雑になるし、すぐ切り捨てます。序盤でちょっとでもダルいと感じたらアンインストールする。でもそこを越えたら面白くなったかもしれない。気軽に試せるのは魅力だが、かなり雑に試している気がする。
『セインツロウ』をセールで買った時も、サブスクだったら15分くらいで止めてるなと思った。でも続けていたら面白くなってきてクリアとやり込みまでちょこっとやった。やり込みに関してもサブスクだとレンタルみたいなものだから、そこまで力を入れる気にもなりにくい。悩んで選んで買ったゲームとサブスクのゲームは熱量が違うのを実感できた。
批判の声も貰いやすいと思う。そのゲームを本当に好きで買った人以外もプレイするので、SNSなどでは「つまんない」「クソゲーだった」という声が増える。『デス・ストランディング』のような個性の強いゲームは特にそういう傾向があるでしょう。
一定の需要と魅力は間違いなくあるが、ゲームビジネスの主軸になるようなものではない。
Game Passの目標73%→結果28%という結果から、さすがにMSも思ったような需要がなかったと気付いたでしょう。
ジム・ライアンが正しかった…
私は最初からPS Plus プレミアムの内容に批判的であり、サービスが開始されてからも予想以上に酷いと感じている。
やはりこうなってしまったね…新しいPlayStation Plusのラインナップが公開されてガッカリ | PS5非公式サイト
でもこの中で、
とも書いていました。
結果、ジム・ライアンの判断は正しかったと言える。映画も音楽も服もゲームもパソコンもなんでもかんでもサブスク化されて、世界がサブスク熱に犯されていました。MSがXbox Game Passを強く推している中でPSも対抗するサブスクが求められている状況でしたが、無茶しなかったのが正解。それでいてGame Passの牽制になる程度の形にはなっている。印象的には『Stray』のヒットは大きかったですね。ホームランか。
まぁ「ジム・ライアンが正しかった」と言っても、ジム・ライアンが全部考えているわけはないですけど。
予想していたように「サブスク疲れ」も言われています。
サブスク疲れ | Google
数年前とは違ってサブスクが整理されるフェーズになっていますから、ゲーム以外のサブスクも含めて新規加入や継続のハードルは上がっている。高い目標に遠く及ばない結果になるのも仕方ない。サブスクで青写真を描くのは難しくなった。
とは言えPS Plus プレミアムに関してはゴミのような内容。クラシックタイトルは思った以上にヤル気がないし、PS4のリマスター版をプレミアムにしてるし、体験版を特典にするというアホみたいなアイデアは完全に失敗。
ヤル気の感じられないプレミアムのせいで無駄に3つのプランになってわかりにくいし、ただでさえ見難いPSストアをゴチャゴチャさせている。プレミアムをエクストラに統合できれば良いけど、プランの変更とか面倒な問題があってやらなさそう。
PS Plus エクストラはサブスクの落としどころとして丁度良いと思う。売上が鈍った旧作を集め、デイワンは『Stray』のような光るものがあるインディーズのタイトル。
ファーストタイトルをデイワンにしない方針は私も最初から大賛成で正解だと思う。クラシックタイトルを頑張ってほしかったけど、そこがまったくダメだという不満は残る。トータルで見ればPS Plus エクストラがサブスクとして丁度良く、ジム・ライアンの戦略は正解だった。
サブスク熱が冷めた後で
いろいろサブスクを触った結果、悩んで選んで買ったゲームを強い熱量で楽しむ魅力を再確認できて良かったです。私はパッケージ版に興味がないので所有すること自体の興味は弱いと思ってたけど、レンタルみたいなサブスクのゲームと自分が所有するゲームへの熱量の違いも感じられた。
改めてサブスクがゲームの主軸にはならないと思いましたし、2年連続での目標未達成によってMSが方針を変えてくる可能性は高いとも思う。ベセスダに加えてアクティビジョンブリザードの買収に成功したなら、反応が理想とかけ離れていたサブスクビジネスに注力するのはマヌケに思える。70ドルで1000万本売れるであろうゲームの価値を無駄に下げ、せっかく買収してもデカい利益が出なければ開発費も回らず、70ドルで1000万本売れるSIEのゲームに差をつけられてIPの価値も下がっちゃう。サブスクやめて普通に売れば互角以上に渡り合えるはずなのに、わざわざ迷走しているように見える。
サブスクに次世代の変化と夢を追っていた時期なら理解できますけど、もう2年連続で思ってたのと違う結果が出ちゃっているのに、まだつっこむのは無謀に思える。
ベセスダとアクティビジョンブリザード以外に買収したスタジオも多いし、良質なソフトをゲームパスで安く消費するんじゃなくてちゃんと売って大きな利益を出して循環させれば、Xbox360時代の時よりも良い感じになるはず。
最近のフィル・スペンサー氏の発言で印象的だったのは、
「我々は、ビジネスのコストに対するリターンを見なければならない」
Xbox price hike possible after Christmas, Microsoft admits | Trusted Reviews
その直後のCNBCの記事で、
> スペンサー氏によると、Microsoftは、ゲーム機1台につき100ドルから200ドルの補助金を出し、
> アクセサリーや店頭での販売でその分を回収することを想定しているという。
Microsoft exec says gaming is ‘somewhat resilient’ to economic weakness | CNBC
Xbox SeriesX|Sがいわゆる逆ザヤであり、1台につき$100~$200の赤字であると。
こういう事情を話すあたり、これまでは先行投資でジャブジャブとお金を注いできたけど、これからはコストに対するリターンを求めるフェーズになりそうです。方針の変更やフィル・スペンサーの解任などもありえてくると思う。
今月にはMSがXbox部門を含む数百人規模の解雇を行ったという報道もありました。無限のゲイツマネーで好きにやれるわけではありません。
マイクロソフトが数百人の社員を一時解雇 | IGN Japan
ジム・ライアン
最近はジム・ライアンの優秀さを感じてしまうことが多いですが、まだまだ日本における活動に不満ですから、ジム・ライアンの解任もあっても良いかと思う。でも後任が誰になるかという不安を考えるとジム・ライアンのほうが安定する気もする。
CoDの件で見方が変わり、フィル・スペンサーがジム・ライアンに個人的な連絡として「現行の契約期間が終わった後、3年間はプレイステーション版を発売する」と提案しました。ジム・ライアンはそれを暴露して「多くの点で不適切であり、我々のゲーマーへの影響を考慮していない」と声明を出した。ジム・ライアンが暴露したというか、最初にこの件を公にしたのはフィル・スペンサーなんだけど「3年」という部分を隠していたんですよね。だからジム・ライアンがそこを指摘した。フィル・スペンサーの発言の信用を失わせるカウンターとしても決まったと思う。
フィルがジムにこっそり個人的に「3年はマルチを続ける」と提案したのって、ジム・ライアンの任期中は独占しないからという意図も感じられるし、4年先ならPS5の販売に影響はまったくないレベル。ジム・ライアンは自分が退任しているかもしれない4年目以降のことも考えているとなると、プレイステーションへの想いや責任の強さを感じる。あまりゲーム愛を感じるエピソードはないけど、初代プレイステーションからのメンバーですから想いの強さはあるか。
買収の件でジム・ライアンの動きは驚きでもあり、最初はSIEがゴネたところで買収されるに決まってるからみっともないと思っていたけど、何も言わなかったらベセスダの時みたいに最初はPSを含むマルチの可能性も匂わせておいてから「やっぱりXbox独占しまーす」となったと思う。ジム・ライアンがプレッシャーをかけて最初は3年のマルチと言わせた後、それにも抗議して最新の発言では「このフランチャイズは、今後もPlayStation®で発売されます。クラウドでプレイしてもらうとか、2~3年後にゲームを撤退させるというようなことは考えていません。私たちの意図は、Call of Dutyが意味を持つ限り、PlayStationで出荷し続けるということです」とフィルに言わせている。3年制限まで撤廃させた。
Phil Spencer claims scrutiny of Xbox’s Activision deal is ‘fair and warranted’ | VGC
争点となっていたCoDの永続的なPS5マルチが確約されたなら買収自体は上手くいくと思うけど、ジム・ライアンのプレッシャーは既に結果を出している。強いリーダーだなと印象が変わった。ジムは押し続け、フィルはコソコソ連絡してきたり発言が変わる。交渉ではジムがフィルを圧倒している。目先の利益しか考えないせせこましいタイプかと思いきや、いざという時には強い人間だった。
アクティビジョンブリザードの家庭用ゲーム機向けの大きなIPはCoD、オーバーウォッチ、ディアブロ。オーバーウォッチ2とディアブロ4は買収前のプロジェクトとしてマルチタイトルですし、長期運営されるからPS5世代では影響を受けません。CoDのマルチも約束されたとなるとアクティビジョンブリザードの買収はPS5では大きな影響はなくなった。
フィルの発言が変わった件に関しては、ジム・ライアンのプレッシャー以外にもゲームパスが伸び悩んでいる中で「我々は、ビジネスのコストに対するリターンを見なければならない」という事情もありそうですけどね。PS5でも売らないと儲かりにくい。ファーストタイトルのデイワン方針を取り下げないとしたら、PS5で単品販売するのが一番効率よく儲かるでしょうから。目標73%→結果28%という厳しい結果でMS側の事情も急転している気がする。
なんにしても、ゲーム業界のサブスク熱は冷めていくかと思う。やっぱりゲームのサブスクは無理がある。
コメント
無理がある無理があるで、イノベーション起こせなかった国があるのをご存知か?似非ジムライアンアンチの本性出してきたな、こいつ
以前のサブスクの記事にもありましたけど、社会人になるとゲーム自体遊べる時間限られますし
今のゲーム自体がユーザー側に熱量を求めるものになってるので、映画や音楽ほどにライトなものでもないので
結局、ゲームとサブスクはあんまし相性良くないって感じですね