【80点】B級オープンワールドゲームの良作『ゴーストワイヤー:トウキョウ』

レビュー・感想

『ゴーストワイヤー:トウキョウ』のプラチナトロフィーを獲得したのでレビュー。

B級オープンワールドゲームの良作

AAA級ではなくB級のオープンワールドゲームとして非常に楽しめた。AAA級ゲームに比べると豪華さやボリュームはないけど、限られた素材を工夫して仕上げている感。

AAA級に慣れきった人がAAA級と比較すると物足りなく感じるだろうけど、個性が光るところも多く「これはこれでいい」と楽しめる人も多いでしょう。

ロケーションが最高

唯一、AAA級と言える部分が渋谷の街をモチーフにしたロケーション。細部までこだわりのある作りで、コピペ感がなく、ゲーム史上最高レベルで素晴らしい。

広さよりも密度重視という印象だが、広さ的にも不満はない。

日本人だからこそ細かいネタを楽しめるところもあり、点数的には外国人より+5点か+10点される感じでしょう。

この魅力的なロケーションでの探索が非常に楽しい。「雰囲気が良い」と言われるゲームは多いですけど、このゲームはその中でも頭ひとつ抜けている。

「突然、東京の全ての人々が消失してしまった。」というところから始まるストーリーだから街に人がいないんですけど、そもそも大勢の人を描けないからこその発想でもあると思う。

スタミナと落下ダメージがないので快適

移動が快適なゲームだというのは意外でした。

ビルからビルへグライドで飛びまわったり飛び下りたり、ワイヤーを使って地上から屋上まで一気に上ったり。
終盤は『インファマス』や『セインツロウ4』みたいにビルからビルへ飛びまくりました。『サイコブレイク』との大きな違い。

もともと長距離の移動は強いられないゲームですけど、無限スタミナなのでダッシュも使いたい放題。オープンワールドゲームにありがちな、ダッシュ→歩いてスタミナ回復→ダッシュ→歩いて…というダサい移動はしなくていい。

移動の快適さは満点ですし、PS5の高速ロードでファストトラベルも速い。

30時間でプラチナトロフィー獲得

見えているサイドクエストを全部クリアしてからメインクエストをクリアして16時間でした。
その後、やり込みをして約30時間でプラチナトロフィー獲得。

通常版より高価な先行版なので、先行期間を堪能しようとがっついてプレイした感はあります。

オープンワールドゲームとしてはプレイ時間が少なめかと思いますが、これは悪い点とは言えない。

マップが広さより密度を重視しており、サイドクエストの移動距離も少ない。オープンワールドゲームにありがちな、車両や馬車での長時間の移動が一切ない。
サイドクエストの目標達成後も対象のNPCが近くに来てくれる場合が多く、戻って報告する時間もカットしている。ダラダラした長い会話もない。
無駄を省いてサクッと終わらせる仕様にしてくれているので、止め時がなくて中毒性がある。

プレイ時間が短いことを悪にしてしまえば、オープンワールドゲームにありがちな長時間の移動やダラダラとしつこく引き延ばすサイドクエストが正解になってしまう。このゲームもプレイ時間を延ばさせる嫌な工夫をすればいくらでもできたでしょうけど、快適に遊ばせてくれる。この点でも密度を重視している。

「AAA級ゲームに比べると豪華さやボリュームはないけど」と言った部分の問題はあり、オープンワールドゲームにありがちな「同じことの繰り返し感」は強め。ゲーム進行による新たな要素の追加は少ないですから、変化なく同じことを繰り返す感は強くなる。中盤以降に変化を加える要素がもっと欲しかったところ。
だからこそメイン+サイドで16時間は丁度良いというか、長くしてもダレる可能性が高い。

ちなみにプラチナトロフィーを獲得するためには10時間級の単純な回収作業が必要となります。ひたすら収集物と幽霊の回収。魅力的なロケーションだから、あちこち行って回収するのも楽しめたところはあります。

古いオープンワールドゲームの型

「B級オープンワールドゲームの良作」と書きましたが、ゲームの構造自体はバリバリの古臭いオープンワールドゲームの型にハマっている。

メインクエストとサイドクエストがアイコンで表示され、そこに行ってクエスト進行。

メインクエストの演出は非常に良いです。『サイコブレイク』っぽさがあり、スタジオの経験とセンスが生きている。

サイドクエストは単純なお使いですが、面白いショートストーリーが多いです。

メインとサイド以外は、

  • 鳥居の浄化
    鳥居周辺の霧が晴れて行動範囲が広がる。
  • 妖怪
    一反木綿、木霊、ろくろ首、河童、鎌鼬、鬼など有名な妖怪が出てくるアクティビティ。大まかに言うと、追いかけて捕まえるだけor戦闘するだけのシンプルなミッション。
  • 狸探し
    オブジェクトに化けている狸を見つける。
  • 地蔵探し
    地蔵を拝むと最大弾数アップ。
  • 収集物(計118個)+ボイスレコーダー(17個)+KKファイル(20個)
  • 幽霊の転送
  • ランダムイベント:百鬼夜行
    WAVE制の戦闘。
  • ランダムイベント:座敷牢
    2~3の座敷牢を守りながらの戦闘。

元も子もない言い方をすれば、オープンワールドゲームにありがちな水増し要素の退屈なアクティビティ。このゲームに限らず、オープンワールドを生かしきれない退屈なアクティビティは、オープンワールドゲームの大きな問題です。

収集物が無駄に多いですが、日本人には馴染み深いアイテムが多く、外国人よりも楽しめる部分ではあると思う。

水増しで地味に失敗しているのは犬。動物を撫でられるのは最近のゲームではトレンドに感じるほど定番。このゲームでも犬を撫でたりエサをあげたりできる。最初は犬がかわいくて良いと思ったのですが、そこら中に犬がいて、ほぼ毎回同じセリフと行動。これではコピペ量産感が強すぎて命ある生き物らしさは感じられない。実際の渋谷で考えたら、そりゃこれぐらいの犬はいるだろうけど、ゲームでコピペ量産しすぎるのは良くない。
もっと「たまに出会えて嬉しい」くらいの頻度で、セリフも個体毎にこだわってほしかった。

面白い戦闘システム

発売前のプレイ動画ではつまらなそうに見えた戦闘ですが、やってみると面白かった。

中距離で弾を撃ちつつ、敵が近づいて攻撃してきたらジャストガードで弾く、まずこの基本となる部分が心地良い。銃のFPSでは味わえないジャストガードの気持ち良さが大きなポイント。

そしてダメージを与えると敵のコアが剥き出しになり、一定時間気絶状態にもなる。この時にL2で『DOOM』の「グローリーキル」っぽい「コア引き抜き」。これも気持ち良いし、複数の敵から同時にコアを引き抜けるので、考えながら戦う楽しさもある。
スキル習得でダウン時の即浄や接近時のコア引き抜きもあり、スタイリッシュで気持ちいい戦闘の幅が広がる。

「ジャストガード」と「コア引き抜き」がシンプルながら素晴らしい味付けになっており、単なるFPSとは大きく違う。

敵の種類が少ないので、同じ敵と何度も戦う退屈さはあります。

NORMALでプレイしましたが、難易度は易しめに感じました。『エルデンリング』の直後なので感覚が麻痺しているのかもしれませんが。
難易度選択も可能であり、トロフィーや報酬にも影響しないですから、好きな難易度を心置きなく選択できるから素晴らしい。『サイコブレイク』はプラチナトロフィーを獲得するために高難易度でのクリアが必要でしたが、『ゴーストワイヤー:トウキョウ』は上手くなくてもプラチナトロフィーを狙える。まぁ、膨大な収集物の回収に根気は必要ですが。

レティクルの操作性が非常に悪い

戦闘システムは良いのですが、レティクルの操作性が大問題。このゲームにおける超もったいない問題だとも感じています。

スティックを倒してから遅延を感じるようなレティクルの反応の鈍さ、スティックを離しても滑るレティクル。アクションゲームの「氷ステージ」みたいな操作性。『サイコブレイク』もこれと似たような感じでしたけど、本当にTango Gameworksのレティクルの操作性は良くない印象が強い。OPTIONSで調整すればマシになりますので、意図して操作性の悪さを出しているわけではなく、ガチで調整のセンスがないだけでしょうし、そもそもレティクルの操作性の悪さは面白さに繋がらない。

OPTIONSで調整しても「レティクルの反応の鈍さ」は問題が残ります。

最初は単純にデッドゾーンが広いのが問題かと思ったのですが、調べてみるとそれ以外の問題がある気がする。
操作性の良いゲームである『リターナル』と比較すると顕著な差がありました。

シンプルな例で比較すると、デッドゾーンを越えたギリギリで浅く真横(右)にカメラを動かす操作と、そこから上に浅く倒して右上斜め10度ほどに動かす操作の使い分けに大きな差がある。

『リターナル』ではスティックを右に倒した状態から、スティックを右斜め上に10度ほど倒すとレティクルも右斜め10度に動き、繊細な操作がしやすい。指の動きにレティクルが吸いついて思い通りに操作できる感覚。

『ゴーストワイヤー:トウキョウ』では、同様の操作で右斜め上に浅くスティックを倒しても、レティクルは真横に動き続けてしまう。微妙な斜め入力をしているつもりでもレティクルが真横に動いてしまうから、操作の気持ち悪さを感じていたんだと気付いた。
そういえば印を結ぶ操作でも、思った方向に反応してくれないと思ったこともあった。

これがデッドゾーンが広いことが原因なのか、それ以外の原因もあるのかはわからない。
感覚的には、『リターナル』の場合は、右にスティックを倒した状態から、そのまま微妙に上に倒すだけで角度が10度つく。『ゴーストワイヤー:トウキョウ』では、右にスティックを倒した状態から上に倒しても、そこにも広めのデッドゾーンがある感じで、入力判定は右のままという感じ。デッドゾーンを超えるほど倒せば反応する。だから繊細な斜め入力を繰り返すのが難しい。
単にデッドゾーンが広いだけなのか、上下左右と微妙な斜め入力でデッドゾーンの違いがあるのか、八方向に反映されやすいような補正があって微妙な斜め入力がやりにくいのか…。原因はわからない。

なんにしても比較してはっきり言えるのは、『リターナル』に比べて『ゴーストワイヤー:トウキョウ』では繊細なスティックの操作ができず、スティックを倒している方向とは別方向にレティクルが動く感覚を覚える。
例えはオブジェクトの輪郭をレティクルでなぞるように操作してみると、『リターナル』は上手になぞれるが、『ゴーストワイヤー:トウキョウ』は連続した微妙な斜め入力が難しすぎて無理ゲーである。

ちなみに『リターナル』『サイバーパンク2077』『Horizon Forbidden West』とか最近のゲームはデッドゾーンを調整できるものもチラホラありますが、このゲームはできない。
海外でのみ発売されている『Necromunda: Hired Gun』はアップデートでデッドゾーンの調整ができるようになりました。

オープンワールドゲームにありがちな中盤以降の「同じことの繰り返し感」が強いゲームですから、戦闘の気持ち良さが重要になってくるわけですが、レティクルの操作性の悪さにより「動かしていて気持ち良くないゲーム」になってしまっている。戦闘システムが面白いだけに、このレティクルの操作性で魅力を潰しちゃっているのは残念。

このゲームの評価は75~80点ですが、レティクルの操作性が『デスティニー2』レベルだったら85~90点。
『リターナル』と比較すると、『ゴーストワイヤー:トウキョウ』のレティクル操作は明確な欠陥であると感じる。

【追記】2022/05/03
Ver1.003.000で改善しました。
『ゴーストワイヤー:トウキョウ』の操作性の問題が改善 | PS5非公式サイト

ありがちだが沁みたストーリー

突然、東京の全ての人々が消失してしまった。同時に冥界より訪れし超常の存在「マレビト」が、街を闊歩し始める。あなたは、生き残った最後のひとりである主人公「暁人」となって 二心一体となった謎の魂と手を組み、東京に迫る超常の脅威に立ち向かう。

平凡でパッしない暁人(あきと)にKKが憑依して術が使えるようになる。
暁人(あきと)は妹を助けるため、KKは 般若面をつけた謎の男を止めるのが目的。

ストーリー的にはありがちで、般若面をつけた謎の男の目的も意外性はなくてよくある感じのやつ。ラストの泣かせ方もありがちなんだけど、素直に楽しめましたし心に沁みました。変に捻るよりも、こういうシンプルで王道的なものの方が良いかなとも思えた。
語り方のバランスは悪いようにも感じた。主人公の葛藤や妹のことを終盤に詰め込んだ感じ。

暁人(あきと)とKKの人間ドラマが軸にあり、キャラクターも好きになれた。クエスト以外でもよく喋ります。最初の印象は暁人もKKも「地味」なんですけど、そこから好きになれたのがイイネ。

洋ゲーの大作は長ったらしくてつまらない無駄な会話が多く、そこら中に落ちている文章も長文で疲れることが多いですが、『ゴーストワイヤー:トウキョウ』はバランスが良い。日本らしい「漫画」みたいな読みやすいやり方というか。フキダシの中の限られた文字数でわかりやすく伝えつつキャラの魅力を出すセリフ、落ちているメモもサッと読めるものが多い。非常に素晴らしい点。昨今の洋ゲーのやり方はダメですね。

デュアルセンスと3Dオーディオが効いている

CSではPS5独占であり、デュアルセンスの触感が生きています。術や弓でのアダプティブトリガー、雨が当たる感触などなど。
このゲームの気持ちいい要素である「コア引き抜き」でもデュアルセンスの手応えが気持ち良さを増幅させてくれる。

収集要素が多いので、3Dオーディオはめっちゃ役に立った。逃げる鎌鼬を追いかける時に音で判断したり。
ただ、天狗の声がクソうるさい。3Dオーディオで位置はわかりやすいけど、うるささの方が嫌。OPTIONSで天狗の音声OFFを入れてもいいくらい。敵じゃないけど、敵よりも敵っぽい存在感の声。

PS5にVRRがない問題は大きい

つい昨日、PS5がVRRへの対応を予告しましたが、現時点では未対応。

グラフィックモードは4種あります。

  • クオリティモード
    30FPS+レイトレーシングあり
  • パフォーマンスモード
    60FPS※レイトレーシングなし
  • HFRクオリティモード
    FPS上限無し+レイトレーシングあり
  • HFRパフォーマンスモード
    FPS上限無し※レイトレーシングなし

パッと見ると、FPS上限無しでレイトレーシングありのモードが良さそうに感じますが、FPS上限無しといっても常に高いフレームレートが出せるわけではないですし、ティアリングも気になります。
そもそも30~50fpsよりも30fps固定のほうが良いという意見も珍しくはない。

この粗さは、PS5がVRR(可変フレームレート)に対応していないからだと思う。可変フレームレートのゲームは不安定です。
開発側からすれば、発売時点でPS5がVRRに対応している想定でもあったと思う。Xbox Seriesはとっくに対応していますからね。

現時点ではHFRモードは不安定さを感じますが、PS5がVRRに対応した時に真っ先に確認してみたい。化けてくれたら嬉しい。
PS5のVRR対応を見越して、既にHFRモードを実装してくれていることを喜びたい。

【追記】2022/05/03
PS5のVRR対応により、HFRクオリティモードとHFRパフォーマンスモードでの動作が非常に良くなりました。

バグなし

プラチナトロフィーを獲得するまで、バグだと思われるところは1つもなかったし、シャットダウンも0回。運が良かっただけかもしれないが、久しぶりにノーバグのゲームで素晴らしい。

最近プレイした『Horizon Forbidden West』『エルデンリング』『グランツーリスモ7』は発売時点でバグの問題を抱えていた。もはやユーザーが有料デバッグ状態なのは仕方ないのかと思っていたところに、『ゴーストワイヤー:トウキョウ』の安定性が沁みる。HFRモードの粗さはPS5がVRRに未対応なのが悪い!

80点

プラチナトロフィーまで一気に遊んでしまったほど好きなゲームなので、85点とか90点とか言いたい気持ちはあるけど、FPSでレティクルの操作性の悪さによる戦闘の微妙な気持ち悪さは大きなマイナス。古いオープンワールドゲームの型にハマっていて同じことの繰り返しなので、操作性の問題は大きい。『Necromunda: Hired Gun』みたいにアップデートで右スティック操作を改善してくれれば85点。

渋谷をモチーフにした街はゲーム史上最高レベルで良い。広さより密度を重視しており、コピペ感を感じにくい。看板や商品など細かい作り込みは日本人だからこそ特別に楽しめるというのもある。
このマップを使い回して別のゲームも作ってほしいと思う。もったいない。

オープンワールドゲームはAAA級タイトルも多く、そこと比較されちゃうこともあってメタスコア75点は妥当だと思うけど、日本人だとプラス5~10点される魅力がある。グローバルなゲーム作りが意識される中、日本人向けのゲームは希少です。

古臭いオープンワールドゲームの型にハマっていてスケールもB級ですけど、独自性のある戦闘、ビジュアルの圧倒的個性、日本に馴染み深い妖怪とアイテムとロケーション、ベースは型にハマっているが味付けによって唯一無二な魅力と個性が溢れるゲームになっていました。

現時点でのGOTYは『エルデンリング』ですけど、「好きなゲーム」としては『ゴーストワイヤー:トウキョウ』も負けてない。

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