ゴッド・オブ・ウォー ラグナロクのプラチナトロフィーを獲得しました。史上最高傑作と言える完成度の高さ。
100点満点
戦闘、パズル、ストーリーとキャラクター、ゲームバランスとボリューム、グラフィックとフレームレート、音楽、トータルの完成度が高くて現時点でこれと並ぶ完成度のゲームを見たことがないため文句ナシの満点。
動かしていて楽しい戦闘
このゲームの一番楽しかったところは戦闘。
気持ちいいパリィと回避、優れた敵AI、3種の武器それぞれの多彩なスキル、レリックと味方の支援、重みと爽快感が溢れるアクション、とにかく動かしていて楽しい戦闘でずっと戦っていたい。「動かしていて楽しい」という部分が職人技と言えるほど洗練されている。
軸はパリィと回避の気持ち良さですかね。攻撃キャンセルからの発動も心地良く、敵の攻撃モーションもわかりやすいですから気持ち良く決まる。ここの調整が絶妙。
ダウンしてしばらく操作が利かないとか、ハメられて操作が利かないとか、そういうストレスも感じないアクションでした。
敵の数が多い時も、見えないところにいる敵の攻撃方向が矢印で表示されたり、仲間が声で教えてくれる。仲間が敵を引き付けてくれているのも感じる。難易度が高めのアクションゲームは多数の敵と戦う場面でストレスを感じやすいが、本作はそれを感じにくい。
見えない位置からの敵の攻撃が矢印で表示されるのは、単に危険を教えてくれて回避すればいいだけでなく、敵全員が視界に入るような位置取りもしやすくなる。
前作は敵の種類の少なさが気になったが、本作は敵の種類も増えています。
プレイヤーフレンドリーで操作しやすいアクションながら、難易度はノーマルでも何度も死ぬほど高め。死にゲーとまではいかないが5段階評価で3.5~4くらいの難易度。ただ、ノーマルの下に2つの低難易度がありますし、難易度によるトロフィーやゲーム内報酬の差もなく、アクションゲームが苦手でも楽しみやすい。
操作しやすいけど死にやすいというバランスも素晴らしい。攻撃キャンセルができなくて不便で死ぬとか、ハメられて死ぬとかじゃない。死んだ時もシステムの不便さじゃなくて己の技術不足だと実感できる。ここも凄いところで、めっちゃ操作しやすくして便利なシステムにしてストレスを排除してユーザーに甘すぎるくらいなのに、ヌルゲーではなく緊張感のある死にやすいゲームに仕上げている。
バランスの良いパズル
ゴッド・オブ・ウォーは戦闘だけじゃなくてパズルも軸となる要素。
パズル難易度はやや簡単だけど簡単すぎず、足止めにならない程度にパズルを解く喜びを味わわせてくれる。この調整も絶妙だと思った。パズル難易度は5段階評価で2~2.5くらい。
ストーリーとキャラクター
ストーリーには期待していなかったけど楽しめた。期待していなかったのは予定調和の親子喧嘩と仲直りになると思っていたからで、実際そこはその通りだった。予定調和の展開にハメるために喧嘩してキレて問題を起こすというパターンがあり、その展開作りはチープに感じなくもなかった。
親と子の意見が合わないことや、それぞれに身勝手でもあるのはリアルです。喧嘩してもなんだかんだ心の奥底では繋がっているのも。神だけど人間らしい未熟さを持つ2人が衝突しながら成長していく展開は良いです。「どうせ予定調和の親子喧嘩と仲直りだろ」と思っていた人を泣かせるほどに。
ミーミルを筆頭に脇役キャラクターが生き生きしていたのが素晴らしい。最近の洋ゲーは人間味を感じにくいキャラクターが多いと感じており、ポリコレ汚染の事情もあって個性が削がれているキャラクターが多かった印象。ゴッド・オブ・ウォー ラグナロクの脇役キャラクターは個性的であり、魅力的な多様性も見せている。UBIのゲームにありがちな魅力を削いだ多様性とは違い、それぞれの個性はまったく違うのにしっかり魅力が感じられた。
ストーリーは意外性と驚きがあり、敵側の事情を描いたことで深みを増した。
でもストーリーを面白いと感じられたのはキャラクターの魅力あってこそかと思う。キャラクターの魅力を引き出すための道中の会話が成功の要因。様々なキャラクターを同行させ、会話の面白さでキャラクターの魅力を引き出し、そのキャラクターたちが織り成すストーリーだから面白い。もちろん前作の思い入れもある。
日本の漫画でも言われる「キャラが立っている」という部分がしっかりしていた。
北欧神話を少しは知っておかないと面白さに気付けない場面がある。知らなかったら謎展開だと思ってしまう場面もあるでしょう。知っていれば神話を上手く落とし込んでストーリー展開を作っていると感心できる。
ロキ – Wikipedia
アングルボザ – Wikipedia
印象としては『ゴッド・オブ・ウォー』が史実で、実際の神話は『ゴッド・オブ・ウォー』という史実を元に盛りに盛られた話という感じがある。『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』でアレをああした展開が、神話では盛りに盛られてこうだった事になってるみたいな。
脚本家は神話をそのままなぞるんじゃなくて、こういう位置づけで考えていたかもしれない。
ゲームバランスとボリューム
プラチナトロフィー獲得まで約40時間でした。メインクエストが20時間ほどで、サイドクエストとやり込みが20時間というところ。
あくまでゲーム内タイマーの時間なので、実時間はもう数時間長いでしょう。
メインクエストが20時間は丁度いい。長すぎるとダレるので20時間前後がベストだと思う。
もうクリアまでの時間が長いゲームが評価される時代は終わっていると思うし、ダラダラさせないことのほうが大事。
サイドクエストとやり込みも同じで、『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』はコピペみたいなサイドクエストやアクティビティがないのも素晴らしい。UBIのゲームみたいに何十回も同じようなサイドクエストやアクティビティを消化する必要はないし、『ダイイングライト2 ステイ ヒューマン』みたいに「フルコンプには最低500時間」的なゲームにありがちなコピペミッションと数だけ多い単調な宝探しは求めてない。
サイドクエストはメインクエストみたいに作り込まれたものもあれば、簡易的なものもある。数は多くないのでサイドクエストが溜まりすぎることはない。これも良くて、メインクエストの邪魔になりすぎない。オープンワールドゲームだとよくある「サイドクエストばっかりやってメインが進まねー」という状況にはなりにくい。長めのサイドクエストはありますが、それはメインにしても良いくらいの内容なので「メインが進まねー」とは思いにくい。「大きな問題を無視してサイドクエストをやる」って感じにならないような工夫もあり、同行している仲間が探索を勧めてくれたりする。メインとサイドの垣根が低いというか、サイドもメインの一部のように溶け込んでいる。
主軸はメインクエストであり、そこをしっかり楽しめる構造にしてある。昨今はオープンワールドゲームが増えすぎて、結局はダラダラしてしまってオープンワールドゲームの悪い部分を感じている中、メインクエストを主軸に楽しめる『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』の構造の素晴らしさを感じた。
戦闘、パズル、ストーリーのバランスが素晴らしいですが、戦闘が一番面白いゲームですから「戦闘をやりたい!」という人にはパズルとストーリームービーがストレスになる可能性はある。その辺は好みの問題だから仕方なし。
戦闘が売りのゲームでパズルを用いるかは悩みどころであり、『デビル メイ クライ』が5でパズルをほぼ廃止してアクションに特化する判断をしましたね。これはこれで成功している。
プラチナトロフィーは前作同様にクリア後ボスが強くて、そこだけちょっと苦戦する。
エンドコンテンツ不足に関してはアイデアが欲しいところでもあるが、40時間で最高の体験をできたと実感できるゲームですから、中途半端なエンドコンテンツを提供せずにピリオドを打つのも悪くないと思える。
『ゴッド・オブ・ウォー』でスコアアタックみたいなこともしたくないですしね。道中の戦闘でも評価システムがないから自由に戦える。
グラフィックとフレームレート
前作も素晴らしかったグラフィック、本作も当然素晴らしい。部分的にはUE5のPS5デモの時の映像が現実化したようにも思えた。本作はUE5ではないですけど。
フォトモードは実装されていないが、ある意味正解だと思った。美しい場面が多すぎて、フォトモードが実装されていたらゲームを進めず写真ばかり撮る人が多くなるかもしれない。
単にリアルとか高解像度ではなく、美しく印象的な世界がそこかしこにある。これが大事。前世代からハードの性能が上がっていて「実写じゃん」というグラフィックに見慣れていてグラフィックの進化度合を感じにくくなった現行機では、リアルなだけではもうグラフィックに感動できませんから美しい風景を作るセンスが問われる。
フレームレートはVRRで75~105くらいの変動をして、80前後で安定している。
この素晴らしいグラフィックの激しいアクションで安定した80fpsは素晴らしすぎる。
PS4ゲームの強化版
Dev Confirms God Of War Ragnarok Is Unable To Fully Utilize PS5
PS5向けにデザインされていないことは実際のプレイで確認できます。
エリアの区切りにゆっくり通り抜ける細い道や崖があり、そこが次のエリアを読み込むための時間稼ぎになっています。こういう仕掛けの数は多いです。PS5向けのゲームであれば、こういう仕掛けは必要なかったかもしれない。もしくは数を減らしたり短時間の仕掛けで済んだはず。
ファストトラベルも前作同様に異界を歩きながらロード待ちするシステム。
こういう仕掛けが読み込み待ちだと知らなければ、煩わしさを感じやすいかと思う。
死にやすいゲームですから、リトライの速さはPS5版の大きな魅力。
フレームレートは80fps前後であり、触覚フィードバックは活用されており、異界歩きのロード待ちも会話がない時はPS4より速いですから、PS5版の魅力はある。前作は後方互換向けのアップデートはありましたがネイティブのPS5版はありませんから、前作もネイティブPS5版にアップグレードしてほしいところではある。
「PS5版は基本的にPS4版ですでに可能なことを強化したもの」はPS5ゲームとしてはネガティブな発言でもありますが、実際にプレイすると完成度がめちゃくちゃ高くて、PS5に特化すればこれより凄いものが作れるという大きな夢を残してくれる。
バグは軽度だった
デイワンのパッチノートが膨大でバグが不安でしたが、40時間の中で認識したバグは2つだけ。エラー落ちは0回。
Day 1 Patch Notes [v. 02.00] – Santa Monica Studio
「このスキルを〇〇回使用」というスキルの試練を達成した直後のスキルはスキル画面で光って知らせてくれるのですが、チェックして光を消した後も再び光ってしまった。特に問題ないバグ。
もう1つはソリに仲間が乗ってくれずに進行不能となったのが1回あったが、オートセーブからリトライして解決。
充実しているオプション設定
SIEのゲームはオプション設定が充実している印象があります。
『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』も細かく設定できますから、ゲーム開始時にしっかり見ておくべき。操作に慣れてから変更するとわかりにくくなって逆効果。
私は×でインタラクト、〇で回避にしました。『Horizon Forbidden West』が〇回避でしたから、そっちのほうが慣れている。この設定を適用したことによる不便はナシ。
注意する点はカメラの揺れですね。デフォルトだとけっこう激しく揺れて「酔う」という人も多いようですから、オフにすることも検討すべき。
体調に悪影響を与えるかもしれないカメラの揺れはチュートリアルで警告したほうがいいんじゃないかとも思った。
前作ありきの本作
個人的には『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』が100点、『エルデンリング』は95点だけど、メディアが選ぶGOTYは『エルデンリング』が多いと思う。『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』は前作を踏襲した強化版であり、新規IPの『エルデンリング』の方がGOTYに選ばれやすいでしょう。甲乙つけがたい傑作ですし、方向性の違うものだと比較もしにくいですから、そういう事情で選出するしかなくなってくる。
ストーリーも地続きですから、前作をやっていないと楽しみにくい。
私は前作の復習のために動画を見たのですが、上級騎士なるにぃ氏の動画がめちゃくちゃわかりやすかった。無許可のネタバラシ動画ではなくSIEからの案件のようですから、気兼ねなく見られます。
動画はPart 2まであり、合計約2時間。字幕もあるので1.5倍速で視聴してもわかりやすかった。
最初は「2時間は長いなぁ」と思っていたけど、視聴を始めたら没頭して前作のストーリーをほぼ完璧に思い出し、本作を100%に近い状態で楽しめた。感謝!
この案件を出したSIEは良い仕事をした。他のシリーズ物でもやってほしい。
前作ありきの本作ながら、『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』は史上最高傑作である。
メタスコアは前作と同じ94点ですが、2018年のPS4と2022年のPS5ではハードとゲームの進化による評価基準に差がありますから、2022年の94点の方がクオリティ面での価値は高い。
『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』のユーザースコアが8.4点は低すぎると思いましたが、中身を見てみると大量の0点or1点爆撃で下げられていました。評価件数が10,000件くらいになれば前作と同等の評価になるか。
リメイク版『The Last of Us Part I』のTwitterでの反応が悪くて個人的にも魅力を感じなくて、『Horizon Zero Dawn』のリメイクの噂が出た時も反応が悪くて個人的にも不要だと思う中、PS2で発売された初代『ゴッド・オブ・ウォー』こそリメイクしてほしい作品です。2010年にPS3でHDリマスターが発売されていますが、PS2クオリティのムービーの粗さは気になった。
洗練されている完成度の高さ
『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』の凄さは「洗練されている完成度の高さ」に尽きる。ゲームとしてはオーソドックスなアクションアドベンチャーゲームであり、尖っているゲームではない。プレイヤーにあまりストレスを与えないように魚の小骨が完璧に取られており、美味しい部分を盛りに盛って贅沢に味わわせてくれる。素人が見れば「普通」に見えるかもしれないほどであり、魚の小骨が完璧に取られていることをプレイヤーが気付かないかもしれないほど洗練されている。
実は超難しいことを簡単にやってみせる天才(職人)の凄さを感じるゲーム。王道を歩いて王になれるゲームは最強である。
史上最高傑作と感じただけにプラチナトロフィー獲得後の喪失感も大きく、しばらく他のゲームをプレイする気にはなりにくい。没頭しましたから、しばらくゲームから離れるのには丁度良いですが。
ジム・ライアン体制でのPS5の展開に対する不満も、こういう最高のゲームが1本あれば吹き飛ぶ。
やはりゲームソフトあってのゲーム機である。『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』がPS5を最高のゲーム機にした。
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