さほど期待していなかった『グランツーリスモ7』でしたが、めちゃくちゃ面白い。
ハンドルコントローラーの呪縛
レースゲームの大問題として「ハンドルコントローラーの呪縛」があると思っている。パッドで遊ぶと「ハンドルコントローラーを買ったほうがいいんだろうなぁ」と思ってしまうし、実際にスティック操作だとリアルになりすぎた車の操作は無理を感じる。極端な話、車を運転する人であれば自分の乗ってる車をスティックで操作するのを想像すると、その無茶さがわかるかと思う。
これは格闘ゲームにおけるアーケードスティックも立ち位置が似ている。でもレースゲームのほうが問題は深刻で、公式ライセンスの本格的なハンドルコントローラーは119,800円であり、サイズも大きい。『ストリートファイターV』の大会では、パッドで優勝する人もいるが、『グランツーリスモSPORT』では見たことない。ハンドルコントローラー必須のように感じる状況。
ドライビングシミュレーターはリアルになりすぎて、ハンドルコントローラーがないと楽しみにくくなりました。でも、『グランツーリスモ2』が171万本売れていた時代は、大半の人がパッドで楽しめていたはずです。
海外ではドライビングシミュレーターも格闘ゲームも売れているようですが、日本では「廃れかけているジャンル」として象徴的にも感じる。どちらもマニアックすぎて敷居が高い。ちゃんと楽しむためには別売りのコントローラーが必要であり、その敷居は格闘ゲームよりもレースゲームのほうが遥かに高い。「ハンドルコントローラーの呪縛」がドライビングシミュレーターを苦しめる。
私はPS4の時はハンドルコントローラーを買ったんですけど、それほどレースゲームをプレイするわけではないので、あまり使わないまま処分する事になった。
レースゲームをメインでプレイする人ならハンドルコントローラー一択で価格もサイズも問題ないでしょうけど、そうでない人は持て余す。かといってパッドだと気分が乗りにくいし、操作も不利という面倒な問題。
ハプティックフィードバックとアダプティブトリガー
PS5ではDualSenseコントローラーのハプティックフィードバックとアダプティブトリガーが面白い体験になっており、パッドでも「車を運転している」という臨場感があり、気分が上がるのが素晴らしい。
アクセルとブレーキの重さ、縁石に乗り上げた時の感触、タイヤがグリップしたり滑ったりした時の感触、路面の僅かな凹凸の感触、そして私が一番好きなのはシフトチェンジの感触。「車を運転している」という感覚がDualSenseコントローラーによって大幅に増す。
繊細なアクセルワークもアダプティブトリガーの抵抗があったほうがやりやすい。
モーションセンサー機能によるハンドル操作
『グランツーリスモSPORT』でも対応していた、コントローラーのモーションセンサー機能によるハンドル操作。コントローラーを傾けてハンドルを操作するやつです。
これがめっちゃ良かった!私はモーションセンサー機能に良い印象を持っていなくて、『グランツーリスモSPORT』や他のゲームでも可能な限りOFFにしていました。
レースゲームにおいては、「体感ゲームとしては面白いけど、操作精度はイマイチなオモチャ」という印象を持っていた。でもTwitterで『グランツーリスモ7』のモーションセンサー機能は良いと言われていたのを見て試しにやってみたら、本当に世界が変わる良さでした。
コーナーでの繊細なハンドル操作がスティックよりもやりやすいし、ハンドルを握っている感覚もある。今までの印象だと「操作性はスティック、体感の面白さはモーションセンサー機能」だったのが、今は「操作性も体感の面白さもモーションセンサー機能」になった。もうスティック操作には戻れない。
PS4→PS5と『グランツーリスモSPORT』→『グランツーリスモ7』への進化でモーションセンサー機能もパワーアップしたのかはわからないですが、嫌いだったモーションセンサー機能の悪いイメージは吹き飛ばしてくれた。
私は運転席視点でプレイしているので、モーションセンサー機能を使いやすいというのはあります。ハンドルが見えていますから、モーションセンサー機能がハンドルにどれくらい反映されているかを映像で見られる。画面内のハンドルを握っている感覚でモーションセンサー機能を使えている。
使いやすい運転席視点
『グランツーリスモSPORT』の時は、「臨場感はあるけど見にくくて使いにくい運転席視点」という印象で、あまり使っていませんでしたが、『グランツーリスモ7』では運転席視点でしかプレイしていません。最高の臨場感です。
アシスト機能のブレーキポイント表示と走行ラインのピンが非常に良いです。こういう機能はレースゲームでは当たり前ですが、「大胆な表示で見やすい」のが最高。
ブレーキポイントの表示は大きくて、かなり遠くからでもブレーキポイントが見えるし、下り坂の手前でも浮いた目印があってわかる。視線を集中させなくてもわかるレベルなので劇的に走りやすくなった。
走行ラインのコーナーにあるピンも見やすい。
客観視点よりも狭い車内視点ですから、『グランツーリスモSPORT』の時は、起伏があるコースはコースを完璧に覚えていないと無理ゲーだったのですが、『グランツーリスモ7』はアシスト表示が見やすくて、初めてのコースでも走行しやすい。これにより、運転席視点のみでのプレイができるようになりました。
強いて言えば、運転席視点で座高の高さは調整できるようにしてほしいですね。
ついでに言うとRewind(巻き戻し)機能が「ない」のも良い。あれがあると使っちゃうので、何度も巻き戻して走行する作業になってしまうのは他のゲームで立証済。走りの楽しさもクソもない攻略作業になります。「使わなきゃいい」に意味がないのも立証済であり、私は縛りプレイはやれません。あると使っちゃう。直前にクリアした『エルデンリング』も、もしイージーモードがあれば使ったでしょうね。
Rewind(巻き戻し)があると無茶な攻めに何度もトライして効率を重視してしまいますが、Rewind(巻き戻し)がないので身の丈に合った慎重な走行を心掛けられている。そこから自分の感覚で少しずつ攻めていく成長が面白い。
その場にいるような3Dオーディオ
運転席視点と3Dオーディオの相性は抜群。
美しいグラフィック
グラフィックも当然パワーアップしているわけですが、PS4 Proの時に既に凄かったので、それほど大きな驚きはないです。
ハンドルコントローラーの呪縛から解放
- ハプティックフィードバックとアダプティブトリガー
- モーションセンサー機能によるハンドル操作
- 使いやすい運転席視点
- その場にいるような3Dオーディオ
- 美しいグラフィック
1つの要素の力ではなく、複数の要素が組み合わさって相乗効果もあり、抜群の臨場感を生んでいる。その結果、ハンドルコントローラーの呪縛から解放された。PS5の標準のコントローラーで、運転の臨場感を味わえる。
高価で大きなハンドルコントローラーを買わなくても、標準のPS5で良い体験ができるのが革命的。
『グランツーリスモ7』に興味があるユーザーでも12万円のハンドルコントローラーや5万円のコックピットを買ってまでプレイしたい人は多くないでしょう。でも「ハンドルコントローラーを買ったほうがいいんだろうなぁ」と思う人は多いと思う。この「ハンドルコントローラーの呪縛」という問題を大きく変えたのは素晴らしい。
あくまで「解決した」じゃなくて「大きく変えた」というところで、最高の環境はハンドルコントローラー+コックピットなんですけど、「大きさ」「価格」「長期的に使うかどうか」という問題を考えた時に、PS5の標準環境の魅力がわかる。
従来のパッド操作は入口として環境が悪かったが、PS5で大きく改善。標準環境からさらに良くしたいと思った時にハンドルコントローラー+コックピットを検討するのが良いでしょう。
過去記事で「ゲームマニアにはわからないサブスクの魅力のなさ」というのを書きましたが、ドライビングシミュレーターも「マニアにはわからないハンドルコントローラーの呪縛」の問題があった。マニアは環境を揃えて済む話ですからね。でも、この問題に悩む層が一番多い事も予想でき、マニア視点になりすぎると廃れていく。
ドライビングシミュレーターがマニアックになりすぎて日本ではサッパリ売れなくなっています。PS5+グランツーリスモ7は、この層を戻す力がある。
楽しいシングルキャンペーンが帰ってきた
キャンペーンモードは、カフェでメニューという「お題」を貰って、それを達成していくのがメインクエストみたいになっている。最初はチュートリアル的な「お題」もありますが、メインとなるのは車集めとレースイベントです。ポケモン図鑑みたいな車図鑑を埋めつつ、メニューを進めていくのが大きな目的という感じでもある。
レースイベントにはレギュレーションがあり、そのレギュレーションに合った車だけを一括表示してくれる機能もあり、その中で最強のポケモンを使うように最強の車を選ぶと楽に勝てたりする。
チューニングショップもあり、チューニングによってPP(車の戦闘力みたいなの)を高めて、本来なら遅めの車を強化してレースで勝てるようにする楽しさもある。
PP制限のレースが少ないのも良いです。改造した車ならテキトーに走行しても圧勝できちゃう。いわゆる「俺Tueee」状態。これは初心者に優しい要素であり、レースに勝つ気持ち良さを味わえる。レースイベントで車の性能差に制限をつけすぎず、「俺Tueeeしたきゃすれば」という自由さがある。
メニューで指定されていないレースイベントに出場する事も当然ながら可能です。オープンワールドゲームの寄り道のように、メニュー以外のレースでクレジットを稼いだりもできる。
わかりやすい導線が引かれた事により、「メイン」と「寄り道」がわかりやすくなり、そこにプレイヤーの「選択」が生まれたのも良い。『グランツーリスモSPORT』はアップデートでレースイベントが追加されましたけど、淡々と消化していく感じでしたから。
レースイベントは物足りなさを感じる
キャンペーンモードの不満は2点。
大半のレースイベントが最下位からスタートして3位以内に入るというもの。追い抜くだけでレースしている気になりにくくなってくるし、作業的にも感じてくる。
そしてレースイベントのレギュレーションが細かすぎて、愛着のある車で走行できない事。メニューを進めていく場合、1車種で1~3レースしたら乗り換えを強いられる。
他のレースゲームでも似たようなシステムがありますけど、「レース毎に車を強制的に乗り換えるのって面白いですかね?」と毎回思う。車に愛着を持ちにくいし、操作性も違って運転スキルを突き詰める感じもないですし、車をカスタマイズしてもすぐ乗り換えだからヤル気になりにくい。
レースイベントの内容は物足りないのですが、ハンドルコントローラーの呪縛からの解放で「運転する楽しさ」がめちゃくちゃ強いので、何でもいいから運転したいという気持ちがあるから良いのです。
Twitterで言われていた不満は、メニューを進めていく事で様々な要素がアンロックされるところ。オンラインマルチプレイですらメニューを進めないと解放されないので、オンラインレースだけをやりたい人には不満になる。
私は1つずつ解放されたほうが覚えやすいので、まったく不満ではないどころか、わかりやすい良いシステム。
細かい事を言えば、カフェやチューンナップショップへショートカットで飛べたら便利になると思う。レースを終えてカフェに戻る時に3回くらい〇を押さなきゃならない。レース前にレギュレーションに合った車に乗り換えてチューンナップショップへ行く時も同様。
NPCのコメントが良い
「カーライフ」という言葉もキーワードになっているゲーム。その中に含まれる「人」の存在もとても良い。
カフェのお客さんはプレイヤーの乗っている車にコメントをくれる。全ての車ではないですけど。これがめっちゃイイ!私は車にあまり興味がなかったのですが、自分の乗っている車をカーマニアのNPC数人が解説してくれると車への愛着がグッと増すし、車に詳しくない自分が知識を得ていく面白さもある。
普通のゲームなら、車のステータス画面だったり図鑑的なものを開いた時に説明文を表示するかと思うんですけど、そういうのはちゃんと読んだ記憶がない。『グランツーリスモ7』では、新しい車を入手すると「カフェのカーマニアに車を見せに行く」というスタイルが定着した。「カーライフ」と「人」を感じる部分。
これがシングルキャンペーンの面白さにも繋がっている。上記した「なんで興味ない車に乗り換えてレースしないとダメなんだよ」という部分も、乗り換えた時にカフェで車の解説をしてもらうと、その車への興味や愛着が増すので、走らせてみたい気持ちになる。
別の問題として「1人で淡々とレースイベントを消化する」というのもある。『グランツーリスモ7』ではカフェ以外にもNPCがおり、レースイベントで対戦したりもする。対戦前に喋ったりもできて、エピソードも個性的だ。このゲーム世界の中に「人」を感じさせてくれて、「1人で淡々とレースイベントを消化する」という部分が薄まる。これも「カーライフ」の中の「人」の存在の大きさを感じます。
ロードがめちゃくちゃ速い
PS5版のレース前ロードが1.5秒、PS4 Proが37.13秒、PS4が41.9秒。
1.5秒というのはロード待ちとしては体感0秒みたいなもんで、コース名が表示される時間としても短すぎるほど。
『グランツーリスモSPORT』や過去作ではレース前のロード時間が長いのも大きな問題でしたので、劇的な改善どころか完全なる解決。ノーストレスで次から次へとレースできる。
中でも嬉しかったのがライセンスですね。ライセンスは走行時間が短いですから、『グランツーリスモSPORT』では走行時間よりもロード待ちのほうが長かったくらい。『グランツーリスモ7』ではサクサクとライセンスを進められる。
初心者歓迎
私は車への興味が弱くてレースゲームもあまりプレイしませんが、『グランツーリスモ7』はオープニングから引き込まれた。
「初心者歓迎!」という感じでもあり、NPCが車の事もチューニングの事もわかりやすく解説してくれる。洋ゲーではないので、変な翻訳も一切ない。
翻訳だけじゃなく、作りそのものが古き良き和ゲーというか馴染みやすさもある。洋ゲーとは大きく違うと感じる。
PS5Shareのハッシュタグも「#グランツーリスモ7」とカタカナで表示されて、日本語のTweetが見やすい。こういう事を当たり前にやっているのも嬉しい。PS自体が海外に呑まれていく中で、日本人が楽しめる日本のゲームの存在としても大きい。
カフェのメニューがチュートリアルにもなっているから、「何からやればいいのかわからない」ともならない。
車への興味と知識を持たせてくれながら、走る楽しさも感じられる。
敵車のAIも難易度が3種類あります。大事な点として、報酬やトロフィーの制限もまったくなく、自由に難易度が選べる。
難易度選択ができるゲームでも報酬やトロフィーの制限があって、実際には自由な難易度選択と言えないゲームが多いですからね。この点でも『グランツーリスモ7』は初心者に優しい。
90点
個人的な評価は90点!
最大のポイントは「ハンドルコントローラーの呪縛からの解放」と「楽しいシングルキャンペーンが帰ってきた」というところ。
高速ロード、ハプティックフィードバック&アダプティブトリガー、3DオーディオといったPS5の機能も生きまくっている。
私のような「レースゲームはライト寄り」であり「オンラインで戦う自信もない」という層に優しくなったと感じるのもポイント高い。
TwitterでもPS5版は好評の声が多い。『グランツーリスモSPORT』の時の荒れた反応とは大違いだ。
グランツーリスモ7 | Twitter
正直、『Horizon Forbidden West』『エルデンリング』『グランツーリスモ7』の3週連続リリースの中で一番期待していなかったのが『グランツーリスモ7』であり、『エルデンリング』にハマりまくってスルーしようかと思っていたら、前日にクリアできたのでクリア記念で買った感じでしたが、今のところめちゃくちゃ楽しい。
懸念があるとすれば、ゲーム内マネーを課金して入手するシステム。でも、今のところ課金の必要性は感じていない。レースイベントで車は貰えるし、逆に車が貰えすぎるほどであります。改造費用にも困っていない。
高級車を何台も入手するなら課金するのが効率良いのでしょうけど、それをやる必要性は感じていない。
将来的にはPSVR2へ対応してくれたら最高だ。『グランツーリスモSPORT』のVRは画質は悪かったけど、体験としては良かった。PS5+PSVR2なら劇的に向上するでしょうし、走る楽しさと臨場感が限界突破しそうです。
『Horizon Forbidden West』『エルデンリング』『グランツーリスモ7』の3週連続リリース、本当に素晴らしかった。日常生活に支障をきたし、本業が雑になったり睡眠時間が減ったりしましたが、3本とも満足できる面白さだったので良しとします。
PSアンチ寄りな視点で斬るブログである事を忘れさせられた3本のゲーム。やっぱり、面白いゲームがある事が一番。
コメント