PSVR2で初めてクリアしたゲーム『Horizon Call of the Mountain』の感想。
『Horizon Call of the Mountain』は、時系列的には『Horizon Zero Dawn』と『Horizon Forbidden West』の間になりますが、ほぼ繋がりのない独立したストーリーであり、主人公もアーロイではなくカージャ族の元戦士であるレイアスです。
『Horizon Zero Dawn』『Horizon Forbidden West』とは別ゲーであり、ほぼ1本道のリニアなVRアクションアドベンチャーゲームです。
サブ要素として、収集物集め、かがり火(弓で射る的)、石積のミニゲームがあります。
石積は『アサシン クリード ヴァルハラ』でクソ扱いされていた印象があります。
良かったところ:クライミング
先行レビューを見た中で最大の問題点だったロッククライミング(登攀)。岩山だけじゃなく綱渡りも全て含めてクライミングという言い方でまとめさせていただきます。
このゲームの50~60%は、このクライミングなんじゃないかと思うほど多いです。これにハマるかハマらないかで評価が大きく分かれるのは間違いないです。
個人的には大ハマり、と言うか途中からハマりました。
序盤は「まぁこんなもんか」という感じでした。操作に大きな問題はないですし、高所の怖さやそこから見える景色の良さもある。絶賛するようなもんじゃないけど、つまらなくもない。
中盤に入るといくつかの装具を入手してアクションの幅が広がります。
でも最初は装具の切替操作に不慣れたため、素直にアクションを楽しめない状態でした。
そこから装具を思いのままに扱えてくるようになると、クライミングの達人になったような気分で楽しい時間になってきます。
そして中盤から終盤に入ると、超高い物体や山に登る事になり、その恐怖が素晴らしかったです。
登っていて不安になるし、下を見ると恐怖を感じる。VRゲームでこの感情を覚えるレベルは感激できました。
片手で掴まって不安定な体勢になった時、ちょっと脚が震えたのは笑えるほどの驚きがありました。部屋の中で立ってるだけのはずなのに高所の恐怖で脚が震えるという面白さ。完全に別世界をリアルに感じちゃっており、これぞVRゲームに求めていたものです。
初代PSVRのゲームでもクライミングはありましたが、脚が震えるほどのクオリティには至れていませんでした。
装具の操作にも慣れ、高所をスイスイと移動している自分に興奮しました。
クライミングはアンチャーテッド、アサシンクリード、トゥームレイダーらでの定番アクションですが、自分が「それ」になった時の感激はゲーマーとして熱かった。非VRゲームで何度も繰り返したそれを、自分が実体験している事に興奮できます。
終盤はスリリングなクライミングもあり、そこはめちゃくちゃテンション上がりました。序盤と中盤で基礎を学んで実践で上達、重要な場面で自分のクライミングの腕前を発揮する気持ち良さは脳汁出ます。
ゲームにおいてクライミングがここまでカッコ良くて気持ち良いものになれるのかと驚かされました。非VRゲームにおいては新しい刺激が生まれなくなって閉塞感を感じていたところもありますが、VRゲームで「こういう面白さもある」と新しい刺激を受けられた事への感激も大きかったです。
クライミングの操作精度は90点くらい。基本的には問題ないですが完璧とまでは言えず、たまに手や体の位置がズレる事もありました。
ちなみに操作オプションの「クライミング中のカメラの自動回転」は「はい」にしたほうが良いです。
カメラ操作を気にせず、クライミングに集中できます。
良かったところ:グラフィックが素晴らしい
グラフィックは大満足。家庭用ゲーム機で「ここまできたか!」という驚きがあり、今後もこういうグラフィックのVRゲームが出てくるという期待も膨らみます。
アイトラッキング+フォビエートレンダリングも一切何の不満もなく自然に機能していました。
グラフィックに関して、視力とピント合わせは重要です。
私は最初は裸眼でプレイしていたのですが、ピントが完璧に合っている時だけシャープな映像で、ホントに微妙なヘッドセットのズレが生じただけで映像がボヤけた。レンズのスイートスポットの狭さが気になりましたね。
でもメガネでプレイしてみたら、一気に二世代くらい進化したような美しさになり、微妙なヘッドセットのズレでの映像のボヤけも気にならなくなり、何の問題もなくプレイできました。
なんとなく「メガネしない方がいいかなぁ」と思って裸眼でプレイしていましたが、それは判断ミスでした。メガネで何の問題もなくプレイでき、このゲームの美しさを堪能できました。
ただし、レンズの距離を手間にしすぎるとメガネと接触する可能性はあるので注意。
良かったところ:機械探検が凄すぎた
グラフィックに関する事ですが、途中で追加される「機械探検」というモードが素晴らしかったです。
これはボートで自動移動しながら、様々な機械獣を見るモード。言葉で言うと「それだけ」の事ですが、自分が見た全てのVRコンテンツの中で最も美しく迫力あるものでした。圧巻です。Pavlovの開発者が「PSVR2はRTX3090Tiより10%上」と言っておりましたけど、この機械探検を体験すると納得できる。私はクリア後に見たのですが、本編よりも「機械探検」の方がワンランク上の印象でした。
PSVR2の体験会でこれを体験すれば一目惚れさせる力があるかと思います。
私も体験した時に、急にPSVR3になった…は言いすぎでしょうけど、大きな衝撃を受けました。
良かったところ:ハプティックフィードバック
VRとハプティックフィードバックの相性は抜群です。その間違いのなさを実感しました。
単純な振動のはずですが、ストームバードが近くを飛んだ時は風圧に感じますし、トールネックが歩けば地面の振動に感じます。ちなみにトールネックの振動は手→頭の順に振動して、地面からの振動だというのが伝わって面白かったです。
映像+音+触覚で相互作用して錯覚効果を増大させて、本物のようなVR世界を創れる。VRにハプティックフィードバックは絶対に必要と思えました。
良いけど惜しいところ:戦闘
戦闘に使う弓とスリングショットの操作性は素晴らしいです。
最初こそ操作に戸惑いましたが、慣れると非VRゲームの『Horizon Forbidden West』よりもやりやすいですし、VRになって操作が直感的になり、弓の名手になった感じは気持ち良すぎます。
素晴らしいのは「体感としては面白いけど、操作は非VRゲームの方がやりやすい」ではなく、体感としても操作のやりやすさとしてもVRの方が良い事です。
戦闘は良くもあり、悪くもあります。
基本的にはプレイヤーは決まったルートを移動しながら戦うシステムであり、戦闘の自由度は低い。これはVR初心者向けでもあるから仕方ないところではあります。
弓矢&回避の操作性が良いですからアクションは気持ちいいです。機械獣の部位を破壊するのは気持ちいいですし、狙い撃つ楽しさもあります。弱点属性を狙う戦闘システムも『Horizon』らしくて良いです。
ただ、自分は決まったルートを動き、敵の攻撃パターンも多くないですから、全体的に似たような戦い方になりがちではあります。
1つポイントがあり、アクセシビリティで自分の攻撃力を最大5倍まで上げられます。これは3~5倍にするのをオススメします。
1倍だと敵が硬いですから、変化の少ない戦闘で長時間になると単調さを覚えます。攻撃力を上げて時短した方が面白くなると思います。敵をコツコツと削って長期戦で狩りの達成感を得るよりも、テーマパークのアトラクション感覚でサクッと戦えるほうが良いんじゃないでしょうか。
テーマパークのアトラクション感覚として、大きな機械獣の存在感はめちゃくちゃ良かったです。このゲームのグラフィックの凄さをそこでも感じました。これはモニターに出力された映像では絶対にわからない部分ですから、体験してみるしかありません。
良かったところ:テーマパークのアトラクション的体験
上記全てをひっくるめて、テーマパークのアトラクション的な面白さがありました。
Horizonの世界の中に入り、そこに生きて存在しているかのようか機械獣と戦い、クライミングで高所の恐怖を感じ、アトラクションとして驚かせてくる仕掛けもある。テーマパークのアトラクションというか、異世界転生のような体験でもあります。
気になったところ:PSボタンの誤爆
序盤はPSボタンを誤爆してしまう事が多かったです。
これは持ち方の癖によって当てはまる人と当てはまらない人にはっきり分かれるはずです。
私は画像のように、ボタンの上に指を置くのがホームポジションで、しかも指の先端でスティックを操作したりボタンを押したりします。PSボタンの上に親指がモロ被りですし、スティックを下に倒すとPSボタンを押してしまう可能性が高いです。
このゲームはコントローラーをギュッと握る操作が多いですから、この持ち方だとPSボタンの誤爆が多くなります。
意識して持ち方を変えれば誤爆は回避できますので、終盤の誤爆はありませんでした。
クライミング中は親指をボタンに乗せないこと、ボタンやスティックの操作は親指の先端ではなく腹で操作することを意識すると大丈夫。
持ち方を変えて解決できましたが、このPSボタンの位置と感度は設計としては良くないです。
せめて片手だけでもPSボタンを無効にするオプションが欲しいとすら思います。
気になったところ:VRゲーム初心者には難しくないだろうか?
このゲームは同梱版もあり、PSVR2のデモディスク的な存在感もあります。
私はVRゲームに慣れているので酔わないですし、自由移動や難しい操作もそれなりにこなせます。そしてめちゃくちゃ楽しかったです。
でも「VRゲーム初心者には難しくないだろうか?」と思うところはあります。アクセシビリティや操作オプションが豊富ですから、初心者でもプレイできるようになっていると思いますけど、初心者がアクセシビリティや操作オプションを理解して上手に扱えるか?それらを活用してゲームとして楽しめるか?酔わないのか?武器や装具の切替は問題なく使えるか?というところは気になります。
初心者向けでもあるデモディスクなら『PlayStation VR WORLDS』のような、わかりやすく酔いにくいゲームの方が良かったんじゃないかと思います。
『Horizon Call of the Mountain』が初心者でも楽しみやすいなら杞憂ですけどね。
気になったところ:ストーリー
「気になったところ:ストーリー」と書いておりますが、むしろ気にならないほど空気だった印象です。ストーリー展開に熱くなることもなく、イライラしたり不愉快になることもなく、空気のような存在でした。
ストーリーが自分自身のVR体験の邪魔になっていないという意味では良いです。
気になったところ:価格
まずゲームのクリア時間は6~7時間、先行レビューでも6~9時間が大半でした。
クリア後はチャプターセレクトが可能であり、収集品回収やミニゲームのやり込みが可能です。
クライミングと射撃の訓練場もあります。
まずボリュームは6~9時間で良いです。これには何の不満もありません。
VRゲームは長時間だとついて来られない人が多いかと思いますし、引き伸ばしてもダレやすくなると思います。
ただ、7,980円は高いです。
ボリュームは良いですけど、価格は下げるべきだと思いました。
たしかに濃厚なVR体験ですが、6~9時間の体験に7,980円じゃユーザーはついて来ないでしょうし、クリア後のやり込み要素は価格分を満足させるほどではありません。
…と文句は言いいますけど、私は同梱版ですからソフトは実質5,000円。
4,980円のソフトとしてなら悪くないです。
まとめ
自分がゲームの世界にいて、高所で脚が震えるほどの没入感がある素晴らしいVR体験でしたし、デモディスク的な役割としてPSVR2自体の良さも存分に感じる事ができて、今後のPSVR2のゲームへの期待も膨らみました。
デモディスク的な役割はありますが、やっぱり上級者向けのゲームのように感じて、VRゲーム初心者が遊んでも楽しいのかな?という疑問は残ります。「機械探検」は初めてのVR体験として最高に素晴らしいものですけどね。
全体を通して印象的なのはクライミングです。
非VRゲームでは退屈な操作になりがちですが、VRゲームの体験だとここまで印象が変わるというのを実感できました。
でもこれを楽しい体験として感じられるかどうかが、このゲームの評価の分かれ目になると思います。非VRゲームのようにただの移動操作と感じてしまったら、このゲームは面白くないでしょう。
自分がネイト(アンチャーテッド)になった気分でプレイすると、めちゃくちゃ楽しく演じられました。そしてあえて高所の危険な状況で風景を見て恐怖を感じる事。片手でもそれなりに登れますし、片手にタンバリンを持って鳴らしながら登ることもできます。VR体験ならではの楽しみ方を見つけられると、より面白い体験になります。
レビュアーのようにレビューするためにクリアしなくちゃいけないという姿勢になると、VR体験の楽しみ方は上手ではなくなりそうな気もします。非VRゲームとは違い、VRゲームではゲームの上手さではなく体験としての楽しみ方の上手さが重要になると思いました。
ここは今後にも大きなポイントであり、「自分の体験」としての濃さがあるVRゲームは受け身だと楽しみにくいところもあるかと思う。
メタスコアは50件時点で79点であり、私個人としても80点の同じ評価です。
M1グランプリ決勝の1組目みたいに基準がわからないというのもあります。
なんにせよ、新しい刺激のある濃いVR体験ができて良かったですし、一番良かったのはPSVR2自体の満足度が高くて、今後への期待が膨らんだことです。
いやーPSVR2、期待以上でめちゃくちゃ良いです。今日はほぼ一日中家でゲームをしていたのに運動後の疲労感があります。このままゲームばっかりやっていると健康になってしまいます。
コメント
普段は眼鏡しないのでVRゲームでもしない派だったんですけど、この記事よんで眼鏡ありでプレイしたら画面めっちゃきれいになって感動しました
こういうグラフィックよいVRゲームはメガネ必須ですね