9月15日からPS5の値上げとマイナーチェンジ版の投入

アナライズ

2022年9月15日からPS5が60,478円(税込)に値上げされ、マイナーチェンジ版も投入されます。

PS5の値上げ

  • 日本
    通常版 54,978円(税込) → 60,478円(税込)
    DE 43,978円(税込) → 49,478円(税込)
  • ヨーロッパ
    通常版 499.99ユーロ → 549.99ユーロ
    DE 399.99ユーロ → 449.99ユーロ
  • イギリス
    通常版 449.99ポンド → 479.99ポンド
    DE 359.99ポンド → 389.99ポンド
  • 中国
    通常版 3,899元 → 4,299元
    DE 3,099元 → 3,499元

日本、ヨーロッパ、イギリス、中国、オーストラリア、メキシコ、カナダでの値上げとなりました。北米での価格は変わらず。

日本は5,500円の値上げ。

急激な円安

値上げの理由は「世界中で発生している物価の上昇や、好ましくない為替の動向」とのこと。

「好ましくない為替の動向」ですから、円安ドル高のため北米での価格は変わらずという具合。値上げされなかった北米が特別扱いというわけではないです。

PS5発売時は$1=104.64円でしたから、北米で$499のPS5は日本円に換算して52,215円。日本での税込54,978円という定価は適正。日本の方が2,763円高い。

今は$1=138.57円ですから、$499は69,146円。値上げ後の60,478円と比較して日本の方が8,668円も安い。

しかも、$1=150円になるという予測も強まっています。日本政府が急激な円安に対する手を打っていないですからね。
ドル円 150円 | Twitter
$1=150円なら$499は74,850円です。値上げ後の60,478円ですら安すぎて厳しい設定になります。
北米が値上げされないのが特別扱いではないどころか、むしろ北米は値下げされないと不遇ですらある。「北米だけ値上げされていないのはズルい」と思う人もいそうですが、世界的に展開している製品を通貨の価値で考えた時、北米はロンチ52,215円→今69,146円と、めちゃくちゃ値上がりしているわけです。通貨の価値が上がってますから。

単純に為替の動向で考えると円換算では北米より日本の方が安くなっている不思議。急激な円安でグローバルな製品の物価のバランスが崩れています。それを調整する価格変更でもある。

PS5の価格は、ロンチ時は$1=110円($499=54,890円)を基準に設定されてた感じ。
9月15日からの価格は$1=120円($499=59,880円)が基準ですかね。

円安というか3月あたりから急激な変動があって米ドル一強状態ですから、北米以外の地域で通貨価値が下がってPS5が値上げしたという具合です。「世界中で発生している物価の上昇」に関してはPS5の原価がどうなったのか知ることはできないですが、「好ましくない為替の動向」に関しては我々からもはっきりと見えているわけですから、今回の値上げについて語るなら最低限ここは理解しておく必要がある。

日本での普及は望めない状況

現状の急激な円安を考えると60,478円という価格ですら無理して抑えている価格ではありますが、家庭用ゲーム機としては売れにくい価格ですから日本での普及は絶望的ではあります。

  • 2006年/2013年/2020年
    PS3(20GB) 49,980円(11/11)
    PS3(60GB) オープン価格(11/11)
    PS5DE 43,978円(11/12)
    PS5 54,978円(11/12)
  • 2007年/2014年/2021年
    PS3(40GB) 39,980円(11/11)
    PS4 41,979円(2/22)
  • 2008年/2015年/2022年
    PS4(CUH-1200) 37,778円(10/1)
    PS5DE(CFI-1200) 49,478円(9/15)
    PS5(CFI-1200) 60,478円(9/15)
  • 2009年/2016年/2023年
    PS3(120GB/CECH-2000) 29,980円(9/3)
    PS4(CUH-2000) 32,978円(9/15)

PS3が39,980円、PS4が37,778円だった時期にPS5が49,478円/60,478円になるのは致命的であります。
DE版は258,831台しか販売されておらず、1,607,405台の通常版が86%を占めますから、60,478円という価格が基本となる。
しかも翌年は薄型(Slim)&価格改定の時期。でもPS5は値下げは見込めず、$1=150円コースなら更なる値上げも必要になる。

PS3もPS4も初期需要が終わってから週販5,000~15,000台くらいの厳しい時期が続き、段階的な値下げで普及させていました。
PS5は初期需要が続いており、未だ転売も衰えず海外への流出も続く。9/15の値上げ後もしばらくは品切れが続くでしょうけど、初期需要が終わった時に週販4桁から抜けられなくなるのは予想できる。60,478円の家庭用ゲーム機が長期的に売れるわけないですから。SIEが日本で頑張っていた時代の32,978円のPS4ですら日本で売るのは簡単じゃなかったのに。

海外の需要が継続すれば国内からの流出で表面上の国内販売は伸びるでしょうけど、国内のユーザーはPS4世代の半分もいなくなるでしょう。『地球防衛軍6』にめっちゃハマっている中、このゲーム内での絶望的な状況が日本でのPS5の現状を彷彿とさせます。

PS3やPS4の時みたいにソフトが増えつつハード値下げで普及させるという状況にならず逆に値上げとなり、日本でのプレイステーションの衰退は避けられないような状況ですが、欧米ではPS4くらいの結果は出せるかもしれない。
欧米で売れても日本市場に魅力がなければローカライズにも力を入れないでしょうし、国内のサードパーティもPS5には期待しにくいでしょうから、国内のソフトも盛り下がるでしょう。日本のユーザーにとっては寂しい状況になる。

SIEの買収

日本での絶望的な状況を変えるとしたら、日本の大衆に60,478円の家庭用ゲーム機を買わせるほどの大きな手を打つ必要があります。
ソフトメーカーの買収は大きな手と言えますが、SIEの買収は日本ではほぼ戦力外のメンツであり、JAPANスタジオ解散以降、日本人にとっては距離が遠い会社になっていっている印象。

  • 2021年6月 Housemarque
  • 2021年7月 NIXXES
  • 2021年9月 Firesprite
  • 2021年10月 Bluepoint Games
  • 2021年12月 Valkyrie Entertainment
  • 2022年2月 Bungie
  • 2022年3月 Haven Entertainment Studios Inc.
  • 2022年8月 Savage Game Studios

最新のSavage Game Studios買収に関するTweetも、日本人ユーザーはほぼ無反応。


日本の大手ソフトメーカーでも買収しない限り、流れは変わらない。が、買収のメンツを見てもSIEは日本のメーカーに興味がなさそうではあります。周りが期待して騒ぐばかりで、現実的には難しいかなと思う。

そして買収の噂はまったくアテになりません。以前からSIEと深い付き合いのあったHousemarqueとBluepoint Gamesは素人でも予想できる範囲ですが、それ以外の買収は誰もリークしてなかったですし、噂もなく突然発表でした。つまり買収はリークされないし、そもそも買収の話を漏洩するような会社は信用されない。出ている全ての噂は当てずっぽうの予想が当たるかどうかでしかない。そしてそういう根拠のない噂を大衆は何故か信じようとしてしまう習性もある。これは理解しておく必要がある。

PS5のマイナーチェンジモデル

9/15の値上げに合わせて、マイナーチェンジモデルのCFI-1200が投入される事がわかりました。

型番 通常版 DE
CFI-1000 4.5kg 350W 3.9kg 340W
CFI-1100 4.2kg 350W 3.6kg 340W
CFI-1200 3.9kg 350W 3.4kg 340W

今のところ見えている差は軽量化のみ。軽量化されているという事は中身が変わっている事でもありますから、冷却周りなどに変更がありそうです。

マイナーチェンジモデルに対して、ユーザーが「変化が物足りない」「据置機が軽量化しても意味がない」と言うのは筋違いでもあり、マイナーチェンジモデルはコストカットや安定性の向上がメインとなります。

PS4は同時期にCUH-1200をリリースしていて、電源ボタンがタッチセンサーから物理ボタンに変更されたり、HDDベイカバーが光沢仕様からシボ加工になっていました。
電源ボタンがタッチセンサーから物理ボタンに変更されたのは、触ってないのに勝手に反応する不具合があったためです。私も悩まされました。
HDDベイカバーが光沢仕様からシボ加工に変更されたのは、触りやすい部分なのに指紋や傷が目立ちやすいからだと推測されます。

PS5の場合、CFI-1100の時点で気になる問題はなかったため、PS4の時ほど変更点はなくて当たり前。
マイナーチェンジする部分が少ないというのは、早期に購入したユーザーには嬉しい話であり、完成度が高かったとも言える。実際、私は初期型PS4でタッチセンサーの不具合があり、PS4 Proでは爆音が気になりました。PS5は静穏で気になる不具合もない。

今回のマイナーチェンジモデルに期待されるのは供給体制の変化のみ。今のPS5にとってはフルモデルチェンジの新型よりも重要な事でしょう。
SoCが7nmプロセス→6nmプロセスになり、歩留まり率の改善、生産ラインの変化などで出荷増が期待される。
2021年度は1,150万台しか出荷できなかったPS5、2022年度は1,800万台を見込んでおきながら4~6月は240万台しか出荷できず、このままだと1,200万台ペース。それでもSIEが1,800万台を見込んでいるとしたら、理由はCFI-1200による供給体制の変化しかない。9/15日以降の供給数に注目です。

仕方ないけど耐えてほしかった

「世界中で発生している物価の上昇や、好ましくない為替の動向」を考えると、値上げは仕方ないし、むしろ60,478円なのは無理して頑張っているとは思う。でも、この価格では日本では売れない。初期需要がまだまだ続いているのでしばらくは売れるが、それが尽きた後に抜けられない低迷期になるかと思う。
目先の利益を考えるせせこましいジム・ライアンらしい判断だけど、PS5の本体価格だけは痛みに耐えて普及を優先してほしかった。

急激な円安で値上げの理由は明確とは言え、SwitchとXbox Seriesが価格を変えていない中ですので、PS5だけが値上げをしている印象の悪さはあると思う。
と言ってもXbox Seriesは褒められたものではなく、そもそもゲームハードの中で日本を極端に軽視した出荷数となっており、1年9ヶ月で日本にはわずか30万台くらいしか出荷していない。この程度の台数なら円安でのダメージも小さい。価格問題以前に出荷しろという話。
SIEも1年9ヶ月で30万台だったなら値上げせず耐えられる痛みでしょう。年末に向けて出荷を増やさなくてはいけないPS5とは日本での事情が違いすぎる。PS4の時の基準で考えるなら、9~12月の4ヶ月で53万台の出荷が求められるPS5。
値上げは残念だけど、円安で売るとダメージが大きいから日本への出荷を抑えるというんじゃなく、値上げしてバンバン出荷するなら、まぁ悪い事ばかりではない。なんにせよ9/15のマイナーチェンジモデルからの出荷数が注目です。日本での値上げとのトレードオフで出荷が増えるかどうか。
Switchは古いハードでありPS5ほど原価が高くないでしょうから、利益は下がっても値上げするほどではないでしょう。任天堂が新ハードを計画しているなら、長期的に見るとそちらは影響を受けるかもしれない。

長期的に見て絶望の中、残された希望は小型化された新型PS5。PS3やPS4と同じ展開なら2023年に小型化PS5が出る予想ではありますが、今回は世界的な経済と物流の混乱もあり、PS5のライフサイクルも従来の7年から8年以上に伸びるんじゃないかと思うところもあり、小型化は2024年になるかもしれない。
小型化で価格改定できれば流れを修正できる。ただ、これはSIEがどうこうではなく、日本政府が円安に手を打てない事が問題です。$1=130円であるならPS5やソフトを日本で安くするのは無理ですから。頑張ってほしいのはジム・ライアンではなく岸田総理や黒田総裁なのでしょう。

理想の展開としては、小型化PS5が出るまで途切れない初期需要で60,478円のPS5が売れて、小型化PS5で値下げして大衆を取り込んでいく事ですね。何度タイムリープしてもその結果にするのは難しそうですが。
初期需要が途切れず後1年続く事を見込んでの短期的に値上げであるなら、ジム・ライアンの小賢しさの勝ち。小型化PS5で値下げするインパクトも増す。
日本で初期需要が途切れたという目安は、Amazonとビックカメラで24時間在庫があったら。抽選でもクレカ作り強制でもなく、これら大手で普通に24時間販売されれば初期需要が途切れたと考えていいでしょう。2020年11月12日のPS5発売以降、そういう状況は訪れていません。

今回の値上げ、日本でのプレイステーションは終わったと言えるほど重いです。でも幸いにも『地球防衛軍6』をプレイしていたため、絶望的な状況を楽しめるところはあります。あくまで「60,478円のまま」「大きな手を打たない」今の状況のままなら終わりという話。絶望をひっくり返す展開の面白さに期待しましょう。
とりあえず9月の東京ゲームショウ2022や、開催が予想されるPLAYSTATION SHOWCASEで明るい話題があるかどうか。8月に値上げという悪い材料を出しておいて、9月に良い材料を残しているのかもしれない。

日本へ出荷が増えるかどうか

まとめると、感情論としては値上げは酷い話で絶対嫌でジム・ライアン体制でPS5終わったなんだけど、世界の経済状況を見ると値上げは仕方なしで、むしろ60,478円は安く頑張ってる印象。

落としどころは、9/15から値上げとのトレードオフで日本への出荷が増えるかどうか。これのみ。米ドル高ですから、アメリカにばかり出荷すれば値上げする必要はないんですよね。でも日本で値上げしたのは日本に出荷するためでもあるはず。値上げした分、日本に余るほど出荷して初期需要が尽きて品不足問題が解決すればいいと思います。
とりあえずは9/22 22時のファミ通の販売データに注目します。型番が変わる直前は出荷がめちゃくちゃ減るので、その前の週は3桁くらいに落ち込む可能性もあるでしょう。その後には最低ラインとして30,000台は継続してほしい。需要切れ以外の理由で年内に30,000台を切るようでは、値上げと出荷のトレードオフは成立していないなと思う。

PS5の値上げをきっかけに、急激な円安が引き起こす問題に関心を持つ人が増えれば、それは良いことかとも思う。

コメント

  1. 名無し より:

    PS5とXSXは世界情勢のせいで色々と大変ですね。
    SIEは世界情勢になるべく影響されないようにPCやスマホ向けにSteamやGoogle playのようなゲーム機に依存しない自社プラットフォームを作ってリスクを分散させるべきだと思いますね。

  2. 匿名 より:

    今回のことでcs機の欠点が明らかになった。つまり、本体ありきのコンテンツ。もう、横マルチが当たり前の世の中で、割安にハード供給するというビジネスモデルも行き詰まりいずれ崩壊に向かうと予想するが。

タイトルとURLをコピーしました