PS5が対応したVRR(可変フレームレート)について解説

システム

2022年4月27日にPS5がVRR(可変フレームレート)に対応しましたのでVRRについて解説します。

VRR対応で得られる結果

ElAnalistaDeBitsがわかりやすい動画をアップしています。

VRR ON PS5 | Framerate Test & Comparison

『スパイダーマン』『ラチェット&クランク』のパフォーマンスRTモードが、VRR対応前は60fps固定ですが、VRR対応後は60~120fpsの変動制になり、80~90fpsで安定しています。

ここで疑問に思うかもしれません。

  • なぜ60fpsの固定フレームレートから60~120fpsの変動フレームレートに変えたのか?
  • なぜVRR未対応の時は変動フレームレートではダメだったのか?

先に答えを言うと、VRR未対応で変動フレームレートにするとスタッタリング(カクツキ)やティアリング(画面ズレ)が発生しやすく、映像が不自然に乱れる。だから30fpsや60fpsに固定する必要があった。
VRRに対応すると、変動フレームレートにしてもスタッタリング(カクツキ)やティアリング(画面ズレ)が発生しにくいので、30fpsや60fpsの固定フレームレートにこだわる必要がなく、上限も解放できる。

VRRに未対応時の問題

VRR(可変フレームレート)に対応していないと、どんな問題があるのでしょうか?

60Hzのディスプレイとは?

60Hzのディスプレイは、1秒間に60コマの絵を表示する。
1秒は1000ミリ秒です。
1コマあたりの表示時間は1000ミリ秒÷60コマ=16.67ミリ秒である。

ゲーム側が安定した60fpsであれば、16.67ミリ秒の間隔で絵が更新されてスムーズな映像となります。
0.1秒での最初の6コマ。16.67ミリ秒ごとに絵が更新される。

50fpsのゲームを動かす時の問題

60Hzのディスプレイでゲームをプレイ中にゲーム側のフレームレートが50fpsに落ちていた場合どうなるか?
1秒間に50コマの絵が表示されるだけで大差ない?実は全然違います。

ゲーム側が50fpsになっていても、ディスプレイ側の更新間隔は16.67ミリ秒(60Hz)のままです。20ミリ秒(50Hz)の間隔でコマが更新されるわけではありません。
上記の6コマに当てはめると、5コマ目までは同じ、でもディスプレイ側の16.67ミリ秒の更新スピードにゲーム側が追いつかず、5コマ目と6コマ目に同じ絵が表示される。つまり2コマ分である33.3ミリ秒の待ち時間が発生する。20ミリ秒ではないんです。

50fps: 16.67→16.67→16.67→16.67→33.3→16.67→…の間隔
60fps: 16.67→16.67→16.67→16.67→16.67→16.67→16.67→…の間隔

この33.3ミリ秒のタイミングでスタッタリング(カクツキ)を感じやすい。
ゲーム側とディスプレイ側で同期できていないので、2つのコマが衝突したようなティアリング(画面ズレ)も発生しやすくなる。

従来のVRR非対応のディスプレイだと「30~60fpsの変動より30fps固定のほうが安定する」という意見も多いです。30fps固定であれば、
30fps: 33.3→33.3→33.3→…の間隔
で更新されて、不自然なスタッタリング(カクツキ)やティアリング(画面ズレ)が発生しないからです。

従来の30~60fpsの変動制に違和感を覚えるのは、単にfpsが変動しているからではなく、変動の間隔が16.67→33.3→16.67→…と極端であり、ディスプレイ側とゲーム側で更新の同期もできていないからです。

VRR未対応での60~120fpsならカクツキとティアリングが顕著に出て、VRR対応での60~120fpsならカクツキとティアリングを感じにくいという具合。
この点は情報をアップデートする必要があります。古い頭のままだと「フレームレート変動制はダメだ」と思い込んじゃったままになります。まぁ30~60fpsの変動だと、ディスプレイと同期して滑らかに変わっても違和感は覚えるかもしれません。フレームレートが低ければ低いほど差がわかりやすく、高いほど差がわかりにくい。『スパイダーマン』『ラチェット&クランク』のような80~90fpsで同期して滑らかに動作している場合は、まずわからないでしょう。

VRR(可変フレームレート)

VRR(可変フレームレート)は、上記の例でいうと通常なら16.67ミリ秒の間隔でコマが更新されるところを、任意のタイミングで更新できるようになる。ゲームが50fpsに落ちた場合、

50fps: 20→20→20→20→20→…の間隔

16.67→33.3という極端な差がなくなり、スタッタリング(カクツキ)が発生しにくい。ディスプレイ側とゲーム側が同期できておりティアリング(画面ズレ)も発生しにくい。

フレームレートの上限解放

ここまでを理解できたなら、『スパイダーマン』『ラチェット&クランク』で、60fps固定をやめて60~120fpsの変動制にできた理由もわかったでしょう。
VRRのわかりやすいメリットは、変動フレームレートのゲームでスタッタリング(カクツキ)とティアリング(画面ズレ)が発生しにくくなったこと。30fps固定や60fps固定にこだわる必要がなくなり、変動フレームレートで上限も解放して常にベストパフォーマンスを出せる。

60fps固定のゲームでも、動作が重い場面で48~59fpsに落ちた時にスタッタリング(カクツキ)が発生しにくかったり、ティアリング(画面ズレ)を抑えられる。
ただ、VRRの対応範囲が48~120Hzですから、固定時は30fpsだけど変動制にすると20~45fpsで動くゲームにはVRRの意味がないんでしょうね。

入力遅延の軽減

入力遅延の問題も理解できることになります。ボタン入力したタイミングが16.67→33.3→16.67→…の33.3のタイミングであれば画面が更新されるまでの待ち時間が長くなる。VRRに対応していれば任意のタイミングで画面更新できますから、入力遅延も軽減される。
そもそも上限を解放していますから、60fps時の16.7ミリ秒よりも90fps時の11.1ミリ秒の方が画面の更新が速い。画面の更新の速さは入力遅延の軽減に直結します。

映像品質が向上

公式ブログに「一部のタイトルでは映像品質が向上する場合があります」と書いてありますが、これはティアリング(画面ズレ)が発生しにくくなったり、滑らかな映像になるという意味だと思います。

VRR未対応タイトルにもVRR対応

公式ブログに「VRRに対応していないPS5タイトルにもVRRをオンにすることが可能です。これにより、一部のタイトルでは映像品質が向上する場合があります。」と書いています。

全タイトルVRRをオンにできるなら全部VRR対応タイトルやんけ!と思うところではありますが、VRRはハードウェアの機能ですから当然と言えば当然であります。

後付け対応となった機能ですから、発売済タイトルにおいて、動作に不具合を与える可能性があるフレームレートに関する部分を勝手に変更するのを嫌ったのかなと思います。
PC版のバイオハザードがフレームレートによってナイフダメージが管理されていたという特殊な例があったります。

今後の発売タイトルは原則対応となるかと思います。

フレームレートがわかりやすくなった

PCゲームであれば個人でもフレームレートの測定が簡単ですが、PS4やPS5では難しく、ほとんどのユーザーがフレームレートを数字で見ることはできませんでした。

テレビ・モニターの中には「VRR Information」として、VRR時のリフレッシュレートをリアルタイムで表示してくれる機能を持ったものがあります。

VRRではゲームのフレームレート=ディスプレイのリフレッシュレートになりますから、このVRR Informationの数値がそのままゲームのフレームレートになります。
私が使っているROG Swift PG32UQは、リフレッシュレートの表示機能があります。数字だけじゃなく、グラフもあるのが良いところ。グラフが邪魔な場合は、数字だけの表示にすることも可能です。
私は数字とグラフを常時ONにして、VRRでのフレームレートの動きを楽しみながらゲームプレイしています。

ROG Swift PG32UQはPS5での使用にまったく問題なし。120fpsも対応していますし、VRRも機能しています。

HDMI2.1のディスプレイは少しずつ普及

HDMI2.1に対応したゲーミングディスプレイは28型で10万円前後です。
まだHDMI2.1に対応したディスプレイを持っている人は多くないでしょうけど、「SDで十分」派がSDでいられなかったように、「HDで十分」派も「4K60fpsで十分」派も、いずれはHDMI2.1以上が当たり前になりますから、現時点でのVRRアップデートは良かったと思います。
ディスプレイの買い替えを検討していた人には、きっかけになるかと思います。今までは「PS5で使うなら4K60fpsで十分かな?」というところがあったけど、60fpsの天井がVRRで破りやすくなったので4K120fpsが必要ですし、48~60fpsの間でVRRで安定動作させるためにもHDMI2.1のディスプレイが必要になる。このVRRアップデート以降は、PS5向けのディスプレイはHDMI2.1(4K144Hz)がベストになりました。

VRR対応がここまで遅れた理由は不明ですが、さほど不便もなかったし対応もされたという事で、まぁいいでしょう。
私は「60fpsで十分」派ですから、80~90fpsになるよりも48~60fpsでの動作が安定することのほうが恩恵が大きいと感じるかもしれない。50~60fpsで動作するゲームは多い。

ちなみにVRRアップデートの反映はPS5の再起動が必要です。レストモードのまま待ち続けても変わらないはず。「アップデートがきてない」と勘違いしていた人も多いかと思う。再起動すれば変わる。

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