ゲームマニアにはわからないサブスクの魅力のなさ

PS Plus

PSのサブスクリプションサービス『Spartacus』(仮)が2022年内に開始されるという噂がありますが、長期的に見てゲームのサブスクリプションサービスは魅力が弱いです。

私はゲームのサブスクに否定的です。サービス開始当初は力を入れて宣伝したり、無料期間だったり赤字覚悟での低価格だったり、ユーザーからしても新鮮なサービスに感じて勢いを見せるとは思いますが、長期的にはユーザーが離れると思います。

ゲームマニアにはわからない

ゲームをネタにしてお金を稼いでいるライターや配信者、もしくはニートで一日中ゲームをプレイしている人であれば、ゲームのサブスクは掛け値なしに魅力的だと思います。定額でネタ探しがしやすいのは、ありがたいことこの上なし。ただ、これに当てはまる人は全体の3%未満でしょう。

多くの人は、そこまでゲーム中心の人生を送っていません。ゲームをプレイする時間も限られる。その限られた時間を「多数のゲームをプレイして好みのゲームを探す」ことに消費しません。これはゲームマニアの発想。ゲームマニアからしたらつまらない選び方でしょうが、現実的には「みんながやってる」「話題の」「好きなシリーズの」ゲームを選びます。月にちゃんとプレイできるゲームも0~2本程度でしょう。

ゲームをネタにしてお金を稼いでいるライターや配信者、もしくはゲームしか趣味がなかったりニートであれば、「ゲームに使える時間より金と本数」でしょうけど、多くの人はゲームに使える時間が多くはない。1000円で遊び放題なんて提示されても、最初は魅力的に感じるが、実際のところあまり使わないなと気付く。

人気のゲームは買わなくてはならない

例えば2月の一番の話題作は『エルデンリング』でしょうけど、結局こういうゲームは買わなくちゃならない。売る側も単品で1000万本売れるものをサブスクに入れるのは損。そういう魅力的なゲームは今後も単品で売られるのは変わらない。
となれば、その期間はサブスクは使わない。ゲームのサブスクに金は払っているのに、9,240円で新作ゲームを買ってサブスクは使わないという虚しさを感じる事になる。

MSが自社のゲームを発売日にGame Passに入れて頑張ってはいるものの、ファーストパーティーの注目作なんて頻繁に出ませんから、焼け石に水です。これはSIEがやっても同じ。任天堂くらいファーストパーティーの依存率が高ければ「サブスクだけでいい」くらいになるかもしれませんが、XboxとPSのファーストパーティーの依存率では無理です。サードパーティーのゲームを8,690円や9,240円で買って、サブスクは金だけ払って放置という状態も長くなる。

たまーにサブスクに入るという使い方もありますが、欲しいゲームを買わずに期間制限のあるレンタルゲームを選ぶというスタイルは定着しにくいかとも思う。1本のプレイ時間が長くなりがちなゲームでは、期間制限は落ち着かないものです。「積みゲー」なんて言葉もありますが、これも象徴的な現象。買って所有して落ち着いて完結しちゃっています。定額レンタルでは、払った金に対する消化しなきゃいけない不安に追われるから落ち着けない。
そもそもサブスクに入ったり抜けたりを繰り返して管理するのも面倒。この後に書く「サブスク疲れ」に関する部分。

ゲームの起動はエネルギーがいる

ゲームの起動は映画や音楽とは比較にならないエネルギーがいります。「今日は仕事が終わったらゲームやるぞ!」と思っていても、いざ仕事を終えると疲れてゲームを起動しなかったなんて事は珍しくない。

寝ながらスマホを使って5分で消化できる音楽、2時間で消化できる映画とは違い、PS5のような据置ゲーム機は、ちゃんとポジションについて、考えながら操作して、1本消化するのに5~100時間は必要とします。
リモートプレイなら寝ながらできるとは言っても、据置ゲームを好きな人がプレイ環境の悪いリモートプレイを選択しにくいでしょう。クラウドも同様。

音楽や映画のサブスクであれば、それなりに消化できて月額に対する満足度も高いでしょうけど、ゲームは一般人なら0~2本しか消化できないので、これなら好きなゲームを買って所有したほうが良く思える。
ゲームは『エルデンリング』を買うと、そこだけに時間を使いますが、映画や音楽は新作を観たり購入しても、サブスクの時間はあまり奪われない。

サブスクは値上げする

Netflixはベーシックプラン(SD画質)が650円でスタートして、現在は990円です。今の時代に480pなんて求められていないでしょうから、スタンダードプラン(HD画質)の950円→1,490円のほうが一般的か。
DAZNも$9.99でスタートして、今では$19.99になりました。
【追記】本日、DAZNの価格が1,925円から3,000円になると発表されました。まぁ結局、こういう感じになりますねという印象。最初は「安くて最強だ!」と踊らされたユーザーが、行き場を無くされた後に搾り取られていく。

最初は低価格でシェアを広げてから値上げするのがサブスクの基本的な戦略。これが「長期的に見てゲームのサブスクは魅力が弱い」という部分でもあり、「あんまり使わない」と気付いてから値上げも重なると、加入しない人が増えてくる。

ちなみにNetflixは、本日の決算発表で株価が最大20%下落しました。
ネットフリックス時価総額5兆円余り減少、会員数見通しに失望感 – Bloomberg
莫大な赤字を数年間出し続けて、ようやく黒字化に移行したかと思いきや、簡単じゃないみたいです。

サブスクの渋滞によるサブスク疲れ

サブスクというか定額制サービスが多すぎて、管理が煩わしくなるフェーズに入ってきているなとも思います。1つのサービスとして見ると「1000円でコンテンツが数千」とか素晴らしく見えるんだけど、猫も杓子も定額制サービスになってきているから、金もコンテンツも時間も大渋滞であり、整理したい気持ちが強くなっている。

管理が面倒でも金銭的にはお得かもしれないが、放置していても金を取られるし「使わなきゃもったいない」という精神的な重さがあり、ユーザーのサブスク離れも始まるかと思う。「離れ」とまでは言わず整理ですかね。競争が厳しくなり、サブスクバブル的な状態は弾ける。中途半端なサービスは容赦なく切り捨てられ、本当に必要とされるトップのみが残るような状態になっていくでしょう。
コンテンツの波に飲まれるのに、自分の手元に残るものは何1つないのもサブスクの虚しさ。

今後、サブスクを語る上で「サブスク疲れ」という視点は重要になってくる。1つのサービスとして見れば、どれも良いものでしょう。でも、既に3つも4つもサブスクに加入しているのであれば使う時間がない。

やればわかる「あんまり使わない」

私はEA PlayとPC GAME PASS(Xbox Game Pass)とPS Plusに加入中で、PlayStation Nowは過去に数回加入したことがあります。実際に加入してみて最初は楽しいけど「あんまり使わない」になるのを実感しています。

やりたいゲームがない時に加入していろいろ触るという楽しみ方はあるけど、1週間もせずに飽きる。そこまでゲーム探しマニアでもない。
ゲームだけが趣味という人間でもないので、やりたいゲームがないなら他のことをするのが当たり前でもある。

客観的に見て価格に対するサービスとしては良いと思うんだけど、ゲームをプレイする時間が少ないほうが問題だから、定額で何百本も遊べるよりも、「これはやりたい!」と自分が強く思ったゲームだけを買っちゃうし、自分のエネルギーを思いっきりぶつけられる濃い時間にしたい。そこに時間を使うからサブスクの存在感が薄くなる。

どんなサービスになるのか不明だし単なる噂で終わるかもしれないけど、最初は『Spartacus』(仮)も「たった1000円であれもこれもプレイできる!」と、めちゃくちゃ良く感じると思うし、実際に触り始めのワクワク感は素晴らしいはず。ただ、長期的に加入していると「あんまり使わない」を実感することになるでしょうし、自分のゲームではないレンタルゲームという距離感も感じるでしょう。PS Plusのフリープレイでもそうですが、自分が興味を持って買ったゲームじゃないものに、エネルギーを注ぐのは難しいです。
結局、トレーラーやSNSで気になるゲームと出会い、それを楽しみにして購入して所有し、時間を気にせずプレイするスタイルに戻る。出会って選んで買ってプレイして手元に残る体験と経験の濃さと比べると、サブスクでのレンタルプレイは薄すぎる。

この感覚の違いがゲームマニアと一般人の大きな差なのがポイント。次から次へとゲームを消化しなくちゃいけないゲームライターや配信者にとっては良いものだし、特に声が大きいから「オススメ!」とされて宣伝されるでしょうけど、ゲームに依存していない「みんながやってる」「話題の」「好きなシリーズの」ゲームをプレイする一般人が加入しても「あんまり使わない」になると思う。それが多数派でもある。
この温度差は、これから多く見られるようになるでしょう。

この私の分け方はズルいところもあり、「ゲームのサブスク、めっちゃ使ってますよ」と言われれば「そんなにもゲームやっているなら少数派のゲームマニアだね」と認定して終わり。実際、ゲームのサブスクを使いまくるにはかなりの時間を必要とするので、よっぽどのゲーマーじゃなきゃ難しいと思う。ライトユーザーは持て余す。

PSのサブスク(広義)が勝つ方法

私はゲームのサブスクに否定的と言いましたが、これはあくまで映画や音楽のようにゲームソフトだけを提供するサービスの場合です。ゲームプラットフォームの定額制サービスとしては既に否定できない存在となっているPS Plusがあります。これはゲームのオンラインサービスを利用したり、PSストアで大幅なセールを受けられたりするもので、入らなきゃ損というほどの魅力がある。フリープレイの存在は小さいとまでは言わないけど決して大きくはない。

『Spartacus』は噂によると、3段階に分かれたサービスらしいです。

    1. PS Plusと同じ内容
    2. PS Plus & Nowみたいな感じ
    3. 拡張デモやゲームストリーミング、PS、PS2、PS3、PSPのライブラリ

根拠のない噂ながら、いかにもジム・ライアンがやりそうな、せせこましく小分けにされた小銭稼ぎの魅力に欠けたサービスです。アンチ寄りになった自分が「ゴミサービス」と素直に吐き出せる内容。数の多くないレトロゲーマーがちょっと喜ぶ程度でしょう。
豪快なフィル・スペンサーのXbox Game Passと比べると大負けしています。ジム・ライアンが「Xbox Game Passの対抗策のつもりではない」と言ったところで、世間はそう見ませんから、「PSのはショボい」「PSが負けてる」という反応になります。新しいサービスは「Xbox Game Passに勝つ」というところも求められている。

そもそも有料サービスの細分化は悪手。ライトユーザーはPS Plusのサービスの詳細すら知らないでしょうし、Nowとの違いもわからない。それが3つに分かれるなんてどうしようもない。調べるのすら面倒だから無視するだけ。

PSのサブスクが勝つ唯一の方法は、上記「3」までを現在のPS Plusに組み込む1本のサービス。この時点で、Xbox Game Passの倍ほど会員を誇るゲームソフト提供型の定額制サービスにもなって会員数では大勝ち。

短期的に見れば大損です。300万人以上の会員がいるPS NowをPS Plusに混ぜちゃうわけですし、PS Plusの爆益をPS Nowのタイトルに分配もしなくちゃならなくなる。

でも、会員数4,740万に育てあげたPS Plusを、そのままゲームソフト提供型の定額制サービスとしても運用するメリットは大きい。PSにとっての脅威であるXbox Game Passが小さく見えるほどの最大の会員数を誇るサービスになり、ゲームソフト提供型の定額制サービスの圧倒的頂点に立てる。しかも、1000万本売れる可能性のある新作をサブスクで消費しないでの頂点。頂点であることは宣伝になり、ゲーム系のメディアやインフルエンサーが度々会員数の比較をするでしょうし、よくわかってない人は「人が多い方」を選びやすいです。
上記したように「サブスクの渋滞」があり、MSもUBIもEAもやっています。個々に見ればそれぞれ魅力がありますが、ユーザーの時間がない。映画や音楽以上にゲームの定額制サービスは2つ以上使うのが難しい。だから「2位じゃダメなんです」状態。1位だけが生き残れる。

私はゲームソフト提供型の定額制サービスには否定的ですが、業界的には重要なサービスとして求められているでしょうし、そこでプレイステーションが圧倒的1位になれるのは強みだ。
私が否定している「ゲームソフト提供型の定額制サービス」という部分に関しても、PS Plusのサービスとの複合型なら実績と魅力はあるので廃れる心配はナシ。

小分けにした小銭稼ぎのショボいサービスに意味はないどころか、Xbox Game Passの良さを際立たせるだけ。やるならPS Plus + Now + レトロゲーム + αの一本化しかない。先のMSのアクティビジョンブリザードの買収を見てもそうですが、PSが相手にしているのはそういうところなのをいいかげん理解する必要がある。短期的な損を恐れてショボいサービスを提供しているようでは勝てない。腕を落とす覚悟で大ナタを振るトップでないと対抗できない。
Xbox Game Passに会員数で大差をつけるゲームソフト提供型の定額制サービスであり、しかも新作をサブスクで消費されずに売れる状態になれるのは、この一本化のみ。目先だけ見ると損するけど、このままじゃジワジワ抜かれるだけなので、ここで差をつける意味が大きい。

とは言え、ジム・ライアンにこういう豪快な判断は難しいと思う。リスクを恐れたショボい定額制サービスを提供して、今世代中にXboxに抜かれる未来が現実的かなと思う。
でもいつかジム・ライアンに「ごめんなさい」したい状況になることを期待する気持ちもある。

コメント

  1. Chocolate より:

    とても興味深い考察と意見として拝見しました。
    自分も元々ゲームのサブスクには懐疑的ではあり
    購入した意識の無い作品では思い入れが少ないし
    何よりセーブデータの保存やその作品をプレイできるのも
    サービスの存続と入会継続に委ねる事が嫌だと思ってます。
    長期的に見てもメリットを感じられなくなったり、値上げされたら
    解約につながるでしょうし。

    ただそれは通常のPSコンソール機のようなゲームなら嫌で
    空き時間に数分やるような軽いスマホゲーやインディーズ、レトロゲーなら
    月額千円程のサブスクでチョイチョイやるのはアリかと思います。
    特にインディーズのような小規模ゲーム会社に安定した利益が回るなら
    ゲーム業界の新しい取り組み、発展や安定につながると思います。

    あとSIEとしてはPS5をゲーマーに流通しづらくソフトが売れない現状を
    打開するにはPSコンソールを脱却してスマホやPS4等でPS5タイトルを
    購入し遊べる様にクラウドゲームにしていく戦略に舵を切るしかないのではと。
    ゲーム市場においてコンソール機のようなコアゲーマー向けのタイトルと比較して
    圧倒的多数のライトユーザ向けタイトルの市場もかなり大きいと思うので
    それをPSで如何に取り込めるかがXboxゲームパスに対抗するにも必須に
    なる気がしています。ただソシャゲや基本無料ゲーのガチャ課金は
    ゲーム業界闇になるので絶対に反対ですが。

    あとジム・ライアンをとっととSIEから追放すべきという意見も
    同じ考えの人が多いようですが同感です。コストカットと
    ユーザ値上げしかしてない気がする。SIEのようなエンターテイメント企業は
    クリエイティブでワクワクして独創性がトップには必要なのに
    全く感じられない。銀行かなんかのトップですか?と言う感じ。

    元日本ブランドとしてPlayStationは好きでしたが、
    このまま凋落していくのか、とても気になります。

  2. 匿名 より:

    クソ記事おっつー

  3. […] ゲームマニアにはわからないサブスクの魅力のなさ […]

  4. 匿名 より:

    自演長文と批判しか来ないコメント欄になんの意味があるのか…

  5. […] Passの伸び悩みは予想通りではあります。 ゲームマニアにはわからないサブスクの魅力のなさ | PSVR2非公式ブログ […]

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