VRゲームはWii+『Wii Sports』『はじめてのWii』の成功を追い続けてはいけない。Wiiのその後の展開にこそ学べるところが大きい。PSVR2はVRゲームの次のステージに進めるのか?
シンプルゲームは数本のアイコンだけが売れる
VRゲームのヒット作と言えば『Beat Saber』『SUPERHOT VR』が有名ですが、これがVRゲームの正解というわけではなく、むしろこれを追っていたらいつまで経ってもVRゲームに人は定着しないと思う。
Wiiでいう『Wii Sports』『はじめてのWii』みたいなもので、大ヒットはしたけどこれを追って同系統のタイトルがヒット連発する事はなかった。
その後は『NewスーパーマリオブラザーズWii』『マリオカートWii』『大乱闘スマッシュブラザーズX』らの定番タイトルがハードを引っ張りました。
この展開がとても大事!
Wii以降のPS Move、キネクト、PSVRは長期的に成功したとは言えません。全部同じ失敗をしている部分もある。
『Wii Sports』『はじめてのWii』『Beat Saber』『PlayStation VR WORLDS』らはとっつきやすくて遊びやすく、新しいプラットフォームの色も感じやすくアイコンにもなって受けやすいけど、その路線でのゲームは右肩上がりでは続かない。作り手が革新的で超面白いアイデアをバンバン出せるわけじゃないし、結局は似たような底が浅いシンプルゲームばかりになってユーザーも飽きる。
2,990円のシンプルゲームをバンバン出してもVRゲームの人気は伸びにくい。
人を惹きつけるインパクトのあるアイコンを見せてから次の展開が大事で、Wiiのように『NewスーパーマリオブラザーズWii』『マリオカートWii』『大乱闘スマッシュブラザーズX』みたいな長期的に愛される定番ゲームに繋ぐ必要がある。PS Move、キネクト、PSVRの共通の失敗はこの部分。
Wiiというハードと『Wii Sports』『はじめてのWii』が大ヒットした時に「ゲームが変わる!」ような事を言っていた人もチラホラいるでしょう。「既存のゲームはダメだ」「新しい時代がきた」みたいな。
……全然変わんないです。長期的に愛されるゲームの形は、そう簡単に変わらない。当のWiiですら『NewスーパーマリオブラザーズWii』『マリオカートWii』『大乱闘スマッシュブラザーズX』『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』に繋いで、従来のゲームをWiiリモコン横持ちでそのままプレイさせたり、従来のゲームにWiiリモコンならではの操作を落とし込んだ。
ハードのためにゲームがあるのではなく、ゲームのためにハードがある。WiiリモコンやVRを無理に生かそうとすれば底が浅くなりがちだ。従来の洗練されたゲームにWiiリモコンやVRが合わせるほうがいい。
新しい体感ゲームを生み出す時、Wii+『Wii Sports』『はじめてのWii』のヒットのインパクトが強すぎたのか、こういうのが正解と思っている節もある。Wiiのその後の展開を見ないで。
ロンチではこのやり方で正解だけど、次のステージで従来のゲームに繋ぐ事のほうがもっと大事。PS Move、キネクト、PSVRの共通の失敗は、次のステージへの移行を考えられていなかった事。PSVRはデュアルショックで『バイオハザード7 レジデント イービル』『ASTRO BOT: RESCUE MISSION』のようなゲームがプレイできるのは良かったけど、PS Moveを使い回した時点で先の展開は見られてなかったのがわかる。PSVR+PS Moveでは従来のゲームを落とし込むのは難しかった。
VRの場合、映画、アダルト動画、ソーシャルアプリなどもありますから、ゲームだけで展開を考えなくても良いのですが、あくまでVRゲームを主体に考えた時、次のステージのVRゲームが求められる。
VRゲーム2.0
Upload.comが史上最高のVRゲーム25という企画をやっていました。
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- Half-Life: Alyx (PC VR)
- The Walking Dead: Saints & Sinners (PC VR, PSVR, Quest)
- Astro Bot Rescue Mission (PSVR)
- Superhot VR (PC VR, PSVR, Quest)
- Demeo (Quest, PC VR)
- Pistol Whip (PC VR, PSVR, Quest)
- Boneworks (PC VR)
- Resident Evil 4 VR (Quest 2)
- Asgard’s Wrath (Rift)
- Lone Echo/Echo VR (Rift, Quest (Echo VR Only))
- No Man’s Sky VR (PC VR, PSVR)
- Blade And Sorcery (PC VR, Quest 2)
- Skyrim VR (PC VR, PSVR)
- Wipeout: The Omega Collection (PSVR)
- A Township Tale VR (PC VR, Quest)
- Beat Saber (PC VR, PSVR, Quest)
- Eleven: Table Tennis (PC VR, Quest)
- Ultrawings 2 (Quest 2, PC VR to follow)
- Blood & Truth (PSVR)
- Onward
- Resident Evil 7: Biohazard (PSVR)
- A Fisherman’s Tale (PC VR, PSVR, Quest)
- Until You Fall (PC VR, PSVR, Quest)
- Unplugged (Quest)
- Zenith: The Last City (Quest, PSVR, PC VR)
1位の『Half-Life: Alyx』は素晴らしいグラフィックのVR-FPS。
2位の『The Walking Dead: Saints & Sinners』はVR-ホラーFPS。
3位の『Astro Bot Rescue Mission』はスーパーマリオ(3D)の影響を色濃く感じるPSVRの傑作。
こういう非VRとして人気のジャンルをVR化したゲームが高く評価され、実際に超面白くてハマる。非VRでも面白いゲームがVRで強化されて「VRゲームは最高だ」となりますよ。
4位以降にもがっつりプレイできるゲームが多数入っている。「ヘッドセットを長時間被れないから大作は無理だ」は的外れであるという結果も既に見えている。そもそも『Beat Saber』もめちゃくちゃ楽しいですから、めちゃくちゃ疲れるけど長時間ヘッドセットを被っちゃいます。1プレイ10分のゲームに固執する必要はない。
PSVR2の最重要ポイントは、こういうゲームが増えるかどうか。『NewスーパーマリオブラザーズWii』『マリオカートWii』『大乱闘スマッシュブラザーズX』みたいな立ち位置になるゲーム。
『Wii Sports』『はじめてのWii』みたいなアイコンとしての火付け役として『Beat Saber』『PlayStation VR WORLDS』は良いもので、VRゲーム1.0と位置付ける。VRゲームの入口として非常に重要。
そこからVRゲームが長期的に愛されるには、長期的に愛されてきたゲームをVRに落とし込む事が必要。『Half-Life: Alyx』『The Walking Dead: Saints & Sinners』『Astro Bot Rescue Mission』『バイオハザード7 レジデント イービル』はVRゲーム2.0と位置付ける。
こういうVRゲーム2.0がバンバン出れば、PSVR2はVRゲーム機として素晴らしいものになるでしょう。
そうなるとVRゲーム1.0も不要どころかますます生きる。大作ゲームばかり遊びたいわけじゃないですからね。PS5でもそうですが、大作も必要ですし短時間でサクッと楽しめるゲームも必要。バランスが大事なのですが、現状のVRゲームは2.0が極端に少ない。だからPSVR2で次のステージへ進んでほしいと思うポイント。
VRゲーム1.5
もう1つの形として、旧作のVR移植があります。
『Resident Evil 4 VR』『Skyrim VR』『Wipeout: The Omega Collection』『Borderlands 2 VR』みたいな。
これも素晴らしいものです。
VRゲームが低価格のシンプルゲームになりやすい理由として、スペックの問題も大きいけど単に市場が小さいからソフト開発に金がかけられない問題も大きい。
開発費数十億円の旧作の素材を生かしてVRゲームを作ってもらえるのは贅沢に感じます。
PSVRの『Skyrim VR』『Borderlands 2 VR』は個人的には素晴らしいVRゲームで超ハマりましたけど、グラフィックに大きな問題があり、PS Moveコントローラーでの操作にさらに大きな問題がありました。
PSVR2では性能的にもコントローラー的にも問題が改善されるでしょうから、こういうVRゲーム1.5も期待が高まる。
シェア的にもMeta Quest 2が1,500万台を販売した事によって、それなりの市場もあるはずですから、PC版でのVR対応+PSVR2でのVR対応で、メーカー側も旧作のVR対応での売上に期待できる状況になってきたかとも思う。
ちなみにPCだとMODによって多数のゲームがVR化されています。
VRゲーム2.0に位置付けた『バイオハザード7 レジデント イービル』も旧作のVR化に似たような性質はありますが、新作の完全VR対応は最新のVRゲームとして受け入れられるから1.5ではないなと思います。
PSVR発売当時は、PSVR専用が良くてPSVR対応(兼用)はVR体験として劣るという意見も見ましたが、今となっては的外れに思う。非VRゲームをVRに落とし込むやり方は安定したゲームの面白さがあるし、非VRゲームとして数十億円を注ぎ込めた素材の良さもある。単にVRの機能を使いまくる事は良いVR体験とは言えず、ゲームの面白さこそが良いVR体験になる。VRためにゲームがあるわけではなく、ゲームのためにVRがある。
たしかに『バイオハザード7 レジデント イービル』『Astro Bot Rescue Mission』らがPSVR2のコントローラーに最適化されれば、より良いVR体験になるでしょう。でもデュアルショック4でプレイするこれらのゲームがVRゲームとして評価が低いという事はまったくなく、VRゲームの中でも非常に高い評価を得ている。単純にゲームとして面白いですからね。
『Half-Life: Alyx』になれるか
VRゲーム2.0のアイコンみたいな存在は1位の『Half-Life: Alyx』なのでしょう。まだ目新しいVRゲームとしての「飛び道具」的な派手さじゃなくて、コアゲーマーを唸らせる完成度のVR-FPS。
こういうゲームが定期的にリリースされるようなら、今の非VRゲーマーも無視できず集まってくるでしょう。1本だけだと「これだけのために本体買うのもなぁ…」となるし、2本目が出てこないと「メーカーはVR諦めたのかな?」まで思う。実際、VALVE INDEXは『Half-Life: Alyx』に続けるタイトルがなくて寂しさを感じる。
Valveが運営しているSteamにSIEはゲームを出すようになりましたし、ValveのVRゲームもPSVR2に来ないかな?とも思う。PSVRではスペック的に無理ですが、PSVR2なら移植可能であるはず。
逆に『Astro Bot Rescue Mission』などもPCVR化してSteamにも出したほうがいい。この傑作がPSVRの中だけで終わるのはもったいない。ついでにPSVR2にも移植してほしい。PSVR2のグラフィック、コントローラー、触覚に対応するならフルプライスで買う価値があるし、新規のVRユーザーに安心して薦められるタイトルにもなる。
VRゲーム市場はまだまだ小さいですから、協力して広め合う必要がある。市場が小さいままだとソフト開発に金がかけられず、小規模なゲームに偏ったままになる。
PSVR2で、こういう存在になれるかもしれないゲームが『Horizon Call of the Mountain』ですね。
度肝を抜かれましたよ。PSVRもMeta Quest 2も重いゲームは動かないですから、オブジェクトを減らしてサッパリした画面のゲームが多いです。『Horizon Call of the Mountain』は描き込みが細かく見えますし、機械獣だって複雑な作りになっているでしょう。本当にこの状態でプレイできるのかどうか信じ難いほど。
しかも未知のVR+触覚まであるなんて期待が限界突破しますよ。
前の記事で書きましたけど、スタンドアロンのVRゲーム機だったら、こういうグラフィックは無理かと思う。ターゲットの最低スペックがPS5だからこそ、ここまでやれる。
初報でSIEがこのタイトルを前面に出しているのが一安心。未だに「Wii Sports症候群」とも言えるようなWii+『Wii Sports』『はじめてのWii』の成功が正解だと思っていたら、期待できないですからね。『Horizon Call of the Mountain』は今のところ私が思うVRゲーム2.0らしいゲームです。ボリュームは少ないかもしれないですけどね。こういうゲームがPSVR2で次々発表されたら素晴らしいし、相乗効果でVRゲーム1.0も楽しみやすくなる。ゲーム機としてバランスが良くなります。
前回はハードに対して思う事を書きましたが、今回はソフトに関して思う事を書きました。PSVR2のソフトの詳細が出る前に。
要点は「PSVR2はVRゲーム2.0に移行できるか?」という事。これができなかったら、発売3年くらいでまた空気になってくると思う。
とりあえずは『Horizon Call of the Mountain』が見えているので、めっちゃ期待しています。
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