今のところ最高のVRゲーム『The Walking Dead: Saints & Sinners – Chapter 1 & 2』

レビュー・感想

ハマり倒した北米版『The Walking Dead: Saints & Sinners』と『The Walking Dead: Saints & Sinners – Chapter 2: Retribution』の感想。

過去記事で書いた事と重複していますが、『Chapter 2』もやり込みましたので改めての感想となります。
PSVR2で生まれ変わった『The Walking Dead: Saints & Sinners – Chapter 1』(北米版)

良かったところ

ゲームらしいゲーム

PSVR2のゲームは次のステージに行けるか?
という記事を半年前に書いていました。
Wiiで『Wii Sports』『はじめてのWii』が大ヒットしましたが、そういうゲームのブームは続かず最終的には『NewスーパーマリオブラザーズWii』『マリオカートWii』『大乱闘スマッシュブラザーズX』『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』ら既存のゲームがメインとなった話。
VRも『Beat Saber』『Superhot VR』らの初期のヒットは素晴らしいけど、その路線は続きません。『Half-Life: Alyx』『Astro Bot Rescue Mission』ら既存のゲームのスタイルをVRに落とし込んだゲームが求められます。

『The Walking Dead: Saints & Sinners – Chapter 1 & 2』は求めていたゲームです。
探索、戦闘、ストーリー、やり込み…既存の非VRゲームで定着しているスタイルをVRに落とし込みつつ、非VRゲームでは絶対に味わえない魅力のあるゲームになっています。

グラフィック

単に「グラフィックがいい」という話だけではなく、PSVR2への最適化のバランス感覚が優れていると感じました。粗いところは粗くして軽くして、重要な部分に力を入れてパッと見の見栄えを良くしています。なんでこんな粗いテクスチャが混ざっているのに本物のような世界の存在感があるのかという驚きのあるマジック。

無理もしていません。それなりにサッパリした画になっています。
フレーム補間技術による120fpsでもなく、ネイティブで90fpsになっているかと思います。フレーム補間技術による120fpsの負荷は60fps相当ですから、グラフィックにこだわるならフレーム補間技術による120fpsを選択することになりますが、映像は不安定になります。
このゲームは解像度+フレームレートのバランスのとり方が素晴らしいです。

グラフィックの最適化の上手さは今までプレイしたPSVR2のゲームの中で一番だと感じました。

ジャンプスケアを使わないホラー

グラフィックの魅力もあり、このゲームはめちゃくちゃ雰囲気が良いです。

演出としてジャンプスケアを使わないところが良いです。作者の「ここでビビらせるぞ」という見え見えの意図を感じません。たまに曲がり角やドアを開けた時にウォーカーがいてビクッとしますが、そういう偶然による驚きが良いのです。

舞台とウォーカーが自然に存在している場所であり、その世界に自分が入るのが楽しいです。

病みつきになる探索

このゲームは物資が重要で、ウォーカー(ゾンビ)が彷徨っている中、空き家などに入って物資を漁ります。
まずグラフィックが良いですから、本当にそこにいるかのようなリアリティがあります。どんな物資が見つかるかというワクワク感とウォーカーの呻き声が聞こえる中での緊張感が入り混じります。この探索のドキドキ感に病みつきになりました。

非VRゲームだったら飽きる作業になると思いますが、このVR体験は何度でも味わいたいものです。

複数のルート

目的地へのルートが複数あり、その選択を楽しめました。
一本道を歩かされるのは退屈になりますから「自分で考えて動いている」と思わせるのはゲームとして非常に大事な仕掛けです。

自分が戦う戦闘

ゲームキャラが戦うのではなく、自分自身が実際に戦うような戦闘も素晴らしい。

PSVR2の銃操作の圧倒的な面白さは他のゲームでも体験していましたが、改めて素晴らしいと思いました。
ハプティックフィードバックとアダプティブトリガーのあるPS VR2 Senseコントローラーは、VR世界の中で本当に銃を持っている感覚が味わえます。
自分の顔の前に銃を持ってきてアイアンサイトを覗き、手の震えを抑えながら慎重に狙う。見事にヘッドショットが決まった時の気持ち良さは格別です。
ちなみに『Chapter 2』ではレーザーサイトがチート級に使いやすかったです。

自分のフォームを固めて、パッと狙いをつけられるようになる。現実での銃の撃ち方が上手くなるような上達の過程も楽しいものです。

近接武器でウォーカーを始末する手応えも良いです。右手でウォーカーの頭を押さえて、左手でグシュッと刺す。この感覚も非VRゲームでは味わえないVRゲームならではのものです。

ムービーがない

ムービーシーンが一切なく、プレイヤーの動きを止めるようなイベントも会話以外はなく、没入感を削がれません。このセンスも素晴らしい。

『バイオハザード ヴィレッジ VRモード』は素晴らしかったですが、ムービーシーンでの不自然さは感じました。自分がそこにいるような感覚でもあるVRゲームは、ムービーシーンの扱いが非常に難しいと思います。平面モニターの前で座ってパッドやマウスを握っている非VRゲームとは大きな違いになります。

『The Walking Dead: Saints & Sinners – Chapter 1 & 2』にムービーがないのは高く評価できる部分です。
ちょっとしたイベントが発生している時も、自分が見ていないと見逃します。これがいいんです、そこにいるという本物の臨場感があります。

気になったところ

Chapter 2での敵の多さ

正直なところ『Chapter 2』よりも『Chapter 1』の方が面白かったです。

『Chapter 1』は戦闘と探索のバランスが秀逸でしたが、『Chapter 2』ではウォーカーの数が多くなりすぎて、バランスが崩れた印象もありました。良くないのは次から次へとポップするシステムですね。倒したそばから湧いてくる感じで、ウォーカー退治が面倒に思う場面もありましたし、不自然にポップしている感もあってリアリティも損ねます。ポップの仕方はアップデートで調整してほしいとも思います。
撃ちまくる面白さはありますが、そっちに寄ると単調な作業にもなってきます。このゲームは探索の魅力も強いですから、偏ると良くないと思いました。
『Chapter 2』から始めてしまうと戦闘処理が忙しくなってしまい、このゲームの探索の面白さや雰囲気の良さを感じにくいかもしれません。やるなら『Chapter 1』からやるのを改めてオススメします。『Chapter 1』をやり込んで強化して自分自身も慣れていないと『Chapter 2』は難しいんじゃないかと思います。

ちなみに『Chapter 1』は海外の大手プレイステーションサイト『Push Square』にてBest PSVR2 Gamesの第1位に選ばれていました。私も同意見。
Best PSVR2 Games | Push Square

人間のAI

このゲームの開発会社は敵AIを作るのが苦手なようです。
ウォーカーは単純な動きで問題ありませんが、人間の敵となると不自然さは隠せずチープに感じます。

ウォーカーのポップだけじゃなく、『Chapter 2』では人間の敵の湧き方にストレスを感じたところがありました。このチープなAIの多数の敵を相手にすると酷さが浮き彫りになります。
『Chapter 1』のDLCでも敵が多い場面がありましたけど、そこは面白くなかったですね。全体数がわかっているなら良いのですが、湧いてきますから理不尽さを感じますし、面倒です。

ストーリーとキャラクター

ストーリーとキャラクターに魅力は感じにくかったです。ゲームを進めるための味気ないレールのようなものでした。

『Chapter 2』のラストの語りは印象的でしたが、まとまらなくてそこに詰め込んだ感もあります。

バグ

感想を書いて再プレイしようとしたところ重大なバグがありました。
ボス討伐後のセーブデータが全てロードできなくなりました。ロードしようとするとエラーで落ちます。ボス討伐前までのセーブデータはロード可能です。
公式Discordを確認したらボス討伐後のデータがクラッシュするという報告があり、開発者には伝わっているようですからそのうち修正されるかと思います。
【追記:2023.04.08】Ver1.004で修正されました。

トロフィーにも不具合と思われるところがあります。
『「ソードオフ」でウォーカーを15体殺す』や『「SMG」でウォーカーを15体殺す』など、条件だけ見ると誰でも早期に獲得できそうなトロフィーの獲得率が0%です。
これも公式Discordで指摘されていました。

Meta Quest 2版が先行リリースされて不具合が多かったようですが、まだ解消されたとは言えないようです。
現在Ver1.003.00、今後のアップデートに期待します。

85~90点のVRゲーム

このゲームの個人的な評価は『Chapter 1』が90点、『Chapter 2』が85点です。『Chapter 2』で変化をつけようとした姿勢は悪くないですが、敵の量を増やすというやり方は、このゲームの魅力を削いでしまったところがあり、悪い部分を目立たせてしまいました。
それでも2本合わせてPSVR2のゲームの中で一番ハマりました。

もしこれが非VRゲームだったら65~70点なんじゃないかとも思います。
近接戦も銃撃戦もVRだからこその手触りと手応えがあるから素晴らしいですが、これを平面モニターとパッドでプレイしたらチープに感じるだろうなぁと思います。雰囲気と探索の面白さもVRだからこそのものです。

このゲームからVR要素を取ったら、平均以下のゲームになりそうな気がします。だからこそVRでの味付けがめちゃくちゃ上手いんだとも気付きます。
PSVR2への最適化が素晴らしく、操作性も良く、ムービーやプレイヤーの動きを止める演出は極力なくし、なるべく自由を与える。今後の「ゲームらしいゲームのVRゲーム」において、教科書にもなりそうな存在です。

『Chapter 1』も『Chapter 2』もやり込みまでハマり、「こういうVRゲームがやりたかったんだ!」という思いに応えてくれたゲームでした。
ただ、操作と酔いへの耐性も含めてVR慣れした人向けのゲームですから、VR初心者にはオススメしにくいですし、今後もこういうゲームはあまり出てこないでしょうね。VR慣れした人向けにゲームを作るのは、ターゲットが絞られ過ぎて難しいと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました